みずほ銀行、4回のトラブルにあ然、原因は「金融界のサグラダ・ファミリア」
「デジタル後進国」だから
統合されたシステムには今も、3行それぞれの旧来型設計が残っているという。本来ならば新たなITベンダーに一任し、全く新しいシステムを設計するべきだが、
「プライド高き興銀、富士、第一勧業の俊英たちは、ATMサービスが止まることをよしとせず、自前で継ぎはぎするかえって面倒な道を選んだのです」(金融庁OB)
自称IT通の英才たちに導かれ、「迷路のような統合システム」(大手コンサルティング会社幹部)は完成したが、「いつか崩れるのではないか」(他行幹部)と心配されていた。それを象徴するかのように、三菱UFJ銀行と三井住友銀行が19年9月に店外ATMを互いに開放する仕組みをスタートした際も、みずほ銀行だけはカヤの外だった。
「みずほは19年夏にようやく旧3行のシステムを完全統合させた直後で、それを理由に参加しなかった。しかし、他の2メガの関係者は、みずほのシステムを完全には信用できなかったと漏らしています。今回の連続トラブルで、これまでの懸念は現実のものとなってしまった。個人や法人の顧客もシステムへの不安は拭いきれず、取引を他行に切り替える動きが加速する可能性もあります」(他行幹部)
みずほは藤原頭取が交代する役員人事を凍結し、金融庁に原因と再発防止措置を報告するため調査を進めるというが、同庁が業務改善命令など厳しい処分を出すのは確実だ。
10年前のシステム障害での調査報告書では、《2002年のシステム障害を教訓としシステムの安定した稼動に組織として留意すれば、今回のシステム障害は防止することができたはず》と指摘されていた。長期・継続的な改善策の実行が求められていたにもかかわらず、みずほ銀行が02年、11年のシステム障害のいずれも教訓にできていないのは明らかで、業務改善命令は避けられないだろう。
だが一方で、米国や欧州、他のアジア諸国ではATM障害は日常茶飯事。ちょっとやそっとのことではニュースにはなり得ない。実際、これだけ大騒ぎするのは日本だけという見方もある。海外転勤と出張を繰り返してきた会社員は、
「米国でも南米でも北欧でも東南アジアでもキャッシュカードやクレジットカードを吸い込まれてきました。みずほの顧客もそんなに怒らなくても良いのに」
この会社員によると、吸い込まれたカードがすぐに返却されないのは、海外では当たり前で、「複数のカードを常に持ち歩き、すぐに決済を止められるように非常時対応の電話番号やメールアドレス、携帯アプリを用意している」と話す。そもそも日本でATM障害がニュースになるのは、紙幣への依存率がいまだに高い「キャッシュレス後進国」「デジタル後進国」だからに他ならない。みずほ銀行の体質は問題があるにせよ、奇妙な完全主義にとらわれるより、デジタル化を進めるきっかけになればいいのかもしれない。
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