みずほ銀行、4回のトラブルにあ然、原因は「金融界のサグラダ・ファミリア」

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「過去の失敗から何も学んでいない」

 みずほ銀行で2週間の間に4度ものシステムトラブルが発生した。1回目は2月28日、全国のみずほ銀行が保有する現金自動預け払い機(ATM)の7割に当たる4318台が停止したうえ、キャッシュカードや通帳を吸い込む事例も5244件起きた。日曜日だったため、慌てた顧客が全国各地から電話で問い合わせた結果、コールセンターもパンク。ツイッターなどには、「みずほ銀行にカードを吸い込まれた」などの悲鳴が次々と書き込まれた。しかし、経営陣の反応は鈍く、全店への出勤指示が出されたのは午後2時半ごろだったという。

 続いて3月3日には、29台のATMが停止。7日にはインターネットバンキングやATMで一時、定期預金の取引が円滑に進まない状態となった。さらに、11日深夜には国内の他行に向けた外貨建て決済約300件が停止した。これは、主に企業の顧客が依頼した取引であっただけに「みずほへの不信感は深刻」(他行幹部)との声が上がった。

 みずほ銀行は2002年4月1日に、第一勧業、富士、日本興業の3行が統合して発足したが、その初日にも、東日本大震災直後の2011年3月にも大規模なシステム障害を起こしたことで知られている。それだけに今回のトラブルについては、「みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)は、過去の失敗から何も学んでいない」(同)といった厳しい指摘が少なくない。

 みずほ銀行の藤原弘治頭取は、4度にわたるトラブルの関連を「現時点で見いだせていない」と説明するが、大騒ぎになった要因が最初の大規模ATM障害なのは間違いない。そこから浮き彫りになるのは、みずほのリスク管理力の低さだ。特に他行幹部が呆れているのは、みずほが月末にデータ移行を強行したことだという。大手紙経済部記者が説明する。

税負担を減らしたい

「みずほは1月に他のメガバンクに先駆けて、紙の通帳を有料化しました。それに合わせて長期間記帳されていない口座を、紙通帳不要の『デジタル口座』に移転する作業を開始し、この大規模なデータ移転の作業日を、2月最後の週末に割り当てていました。

 ですが、月末は金融決済や定期預金の自動継続などの作業が集中する時期です。25日など給与支払い日も重なるため、システムに負荷がかかりやすい。そのため、普通は月下旬のデータ移行は避けるものです。それでも、みずほは月末処理に踏み切りました。というのも、紙の通帳は4月時点の発行数で1冊当たり200円の印紙税が課せられるため、“紙の通帳を少しでも減らして、税負担を減らしたい”というケチな考えがあったからでしょう。

 多くの銀行関係者も、みずほは通帳の発行数を減らし、印紙税の支払いを圧縮しようとしていた。印紙税分のコストとシステム障害のリスクを天秤に掛ければ、普通はリスクを避ける判断になるはずだと、批判しています」

 以前からみずほ銀行のシステム音痴ぶりは金融界では知られていた。第一勧業、富士、日本興業の3行が掲げた「対等合併」の理念も影響しているという。みずほ銀行、みずほFGの脆弱なシステムは、発足当初からということになる。

「3行はそれぞれレガシーな勘定系システムを持っていた上、銀行間の優劣を明確にすることを避けたため、“ワンみずほ”の名の下、継ぎはぎでシステムを一本化する道を選んだのです。11年に本格化した統合作業は2度の延期を経て、19年夏に終結しましたが、費やされたのは4000億円を越える資金と35万人月もの人員。銀行関係者の間では一時、完成までの建築作業が300年を要すると言われるスペイン・バルセロナの教会に喩え、“金融界のサグラダ・ファミリア”と揶揄されていたほどです」(前出の他行幹部)

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