室屋成への差別発言で解説者がクビ…なぜ“スシ・ボンバー”が良くて“寿司の国”はダメなのか?

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「彼らも自ら使っているよ」

 ダールマン氏は、スカイから処分を言い渡されたと見られる12日に、このようなコメントを投稿している。

「残念ながらスカイは、契約が満了になる6月まで待てなかった。発端はハノーファーのムロヤに対して『決めていたら、ドイツでの初ゴールだった。彼が最後に得点を挙げたのはスシーズの国だった』と言ったことだ。日本をスシーズの国と言いかえた。ノルウェーをフィヨルドの国と呼ぶようにね。何人かはそれを利用して人種差別的な背景をでっち上げようとした。そのようなヘイターの要求に折れる人がいることを非常に悲しく思う。SNSのヘイターが報道の自由に勝ってしまったんだ。即座に解雇されたことにより、レイシスト疑惑をかけられたような感じがする。だが、私はそんなバカげた言いがかりになんとしても対抗してみせる。人種差別なんて大嫌いだ! オープンマインドを持つこと、多様性を受け入れることは自分にとっての大切なテーマだ」

 同氏は続けて「無数の日本人たちが確認してくれたが、“スシーズの国”の形容は彼らも自ら使っているよ。それも、誇りを持って、だ。彼らは0.0パーセント、それを人種差別とは感じていないんだ」とも主張。その“無数の日本人たち”のドイツ語力が定かではないうえ、自国のことを“誇らしげに寿司の国”と呼ぶ日本人が実際にいるのかどうかはさておき、ダールマン氏は最後まで「スシーズ」という複数形を貫いていた(ちなみに同氏が写真を投稿した上記の日本人らしき人物からのメッセージでは寿司の単数形が使われていた)。

爆発的な得点力への期待

 現在62歳のダールマン氏は、長年の経験を備える解説者にもかかわらず、こだわる必要がないはずの「面白くもおかしくもない」(ハノーファーのクラブスポークスマン)表現を使い、それを弁明するうちにさらに自説に固執した。有料放送局のスカイとしては当然、良からぬイメージを避けたいはずで、氏の発言そのものではなく、撤回するなどしていくらでも対応できたはずなのに一歩も譲らずにさらに火に油を注ぐ彼の姿を受けて、見切りをつけたのだろう。

 現に同局のスポークスマンは現地メディアで、「ヨルク・ダールマンとは長い間、良い仕事関係を築いていました。ですが、最近の彼はたびたび無神経かつ不適切な態度が目立ち、スカイではメディア企業としての責任をもって、彼を今後起用しないことを決めました」という決断を伝えただけで、“スシーズ”発言には一切触れていなかった。

 ドイツでは元日本代表FWの高原直泰が、かつて“スシ・ボンバー”と呼ばれていたのも有名な話だ。それに不快感を覚えた日本人もいるかもしれない。ただ、この場合の“スシ”は日本人の蔑称と捉えられなくもないが、“ボンバー”(=爆撃機)は1964年からの15年間、バイエルン・ミュンヘンのエースとしてブンデスリーガ歴代最多得点記録を樹立したレジェンドFWゲルト・ミュラー氏のニックネームに倣っているため、今回のケースとは様相が大きく異なる。高原の呼称は、当時ドイツでは珍しがられた日本人選手の出身国を強調しつつ、爆発的な得点力への期待をうかがわせる愛称というニュアンスが強いのだ。

 とはいえ、それもかれこれ20年くらい前という一昔前のこと。以降、数多くの日本人選手がブンデスリーガに挑戦し、フランクフルトでレジェンド級の地位を確立した長谷部誠のような選手もいる。現在のドイツで1人の記者が日本人選手を“スシ・ボンバー”と称した場合、どれほどの反響を呼ぶのか分からない。ダールマン氏の発言ほど悪い解釈はされないものの、時代遅れと非難されるかもしれない。

デイリー新潮取材班

2021年3月22日掲載

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