室屋成への差別発言で解説者がクビ…なぜ“スシ・ボンバー”が良くて“寿司の国”はダメなのか?

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“スシーズ”という複数形

 日本を“寿司の国”と呼ぶのは何が悪いのだろうか。ドイツ人はポリティカル・コレクトネスに捕らわれ、敏感になり過ぎているのだろうか。海外サッカーを追う多くの日本のファンは報道を受けて、そう思ったかもしれない。ドイツ人の視聴者の一部が放送局「スカイ」のサッカー解説を務めるヨルク・ダールマン氏の言葉をなぜ問題発言として非難したのか、そしてスカイがなぜ同氏に重い処分を科したのかを掘り下げてみたい。

 今月6日にドイツのスカイでブンデスリーガ2部のエルツゲビルゲ・アウエ対ハノーファーの試合解説を担当したダールマン氏は、終盤にハノーファーの室屋成が好機を逸した際に「決めていたら、ハノーファーでの初ゴールだったのにね。彼が最後に得点を挙げたのは“スシーズ”の国だった」と発言。それを発端に、同氏は数日後にスカイから今シーズンいっぱい試合の解説を担当させない決断を言い渡され、最終的に解雇へと追い込まれることになった。

 ここでまず指摘しなければいけないのは、ドイツ語と日本語では言語が根本的に異なるということだ。日本の報道では、その発言が“寿司の国”と訳されたが、これは誤訳ではないものの、実際にダールマン氏が口にしたのは“スシーズ”という複数形だったことが伝わらなかった。

 ドイツ語では料理や食べ物を指す場合、種類の多さを敢えて強調しない限りは複数形は使われない。そのため、ドイツ人のすべてではないものの、寿司の複数形は日本人を食べ物に例える侮蔑のように聞こえてもおかしくないニュアンスを孕んでいたのだ。

「あんたは正気か?」

 それにしても、一度の軽はずみな表現、しかも人によっては人種差別ではないと受け止めるかもしれない発言を理由にダールマン氏をクビにするのは処分として重すぎなのでは、という疑問も残るかもしれない。

 ただ、それには別の背景もあることを知っておかなければならない。数カ月前、ダールマン氏は試合解説を務めた際に、ウニオン・ベルリンのGKロリス・カリウスのパートナーに対する女性軽蔑発言(「家で彼女とイチャイチャできるのならば、私だってベンチに座るよ」)が批判の嵐を呼び起こし、すでにスカイから今夏までの契約を更新しない意向を伝えられていたのだ。

 一方、放送局がなぜダールマン氏の解雇を夏まで待たなかったのかに関しては、室屋への発言に対してツイッターで「人種差別に我慢できない」「最低」「スカイ、どうにかしろ」などといった批判の声が上がり、ちょっとした炎上が起こってからのダールマン氏の対応に起因していると思われる。

 ダールマン氏はまず、自身のインスタグラムでユーザーに対し、「日本のことを“スシーズの国”と呼ぶと、人種差別になってしまうのか? あんたは正気か?」と返すと、後日には発言を問題視しない日本人と見られるユーザーからのメッセージの写真を添えながら「寿司に関する数々の日本人からのリアクションにありがとう」と感謝を綴るなどして自己の考えを正当化した。批判へ一向に理解を示さず、さらには寿司を食べる自身の姿も披露しながら親日家ぶりをアピールしたのである。

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