“4回転ジャンパー”紀平梨花、難敵ロシア勢に対抗する秘策はあるのか?

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「もう次へ進めない」

 昨年12月に行われた全日本選手権で、遂に「4回転サルコウ」を成功させた紀平梨花は、世界でも数少ない強敵ロシア勢を追うことができる女子スケーターだ。

 2018-19シーズンにシニアデビューし、ジュニア時代から試行錯誤を重ねて習得したトリプルアクセルを武器に、いきなりグランプリファイナルを制してシニア女子のトップに駆け上がった紀平。フィギュア日本女子をけん引してきた伊藤みどりと浅田真央が跳び続けてきた「トリプルアクセル」を受け継ぐことも、彼女の存在感をさらに高めた。

 シニア2シーズン目を前にした19年5月の米国・コロラド州での合宿で、4回転ジャンプに挑戦している。だが、演技の完成度も強みとする紀平は、練習では着氷している4回転を試合で跳ぶことには慎重であり続けてきた。初めて4回転を跳んだ試合は、2019年グランプリファイナルで、その際は転倒している。

 しかし、コロナ禍により今季初の試合となった全日本で、「今回跳ばないと、もう次へ進めない」という固い決意で4回転サルコウに挑む。フリー冒頭で鮮やかに成功させた4回転サルコウは加点3.19がつく上々の出来栄えで、今季から拠点を移したスイスでの地道な練習が花開く結果となった。日本女子では、安藤美姫に続く二人目となる“4回転ジャンパー”の誕生である。

 そして、4回転サルコウに続いて跳んだトリプルアクセルも回転不足ながら着氷。紀平が「4回転とアクセルをどちらも一応試合で決められたのは、すごく自分の中で大きなもの」と語ったように、自信につながる全日本のフリーだった。

上位3名は4回転を2本

 だが、紀平のライバルとなるロシア勢(組織的なドーピング問題による処分のため、ロシア代表ではなくロシア・フィギュアスケート連盟の選手として出場)はそれを上回るハイレベルな戦いを繰り広げている。全日本と重なる日程で行われていたロシア選手権。優勝したアンナ・シェルバコワは2種類(ルッツ・フリップ)2本、2位のカミラ・ワリエワはトウループを2本、3位のアレクサンドラ・トゥルソワはルッツを2本と、上位3名はすべて4回転を2本跳んでいる。

 全日本フリー後の記者会見で、ロシア勢について問われた紀平は「すごい刺激にもなりましたし、もっともっと完成度の高い演技を常に目指していきたい」と、自らの技術をさらに高めていく意気込みを示した。

 現行のルールでは、女子はショートで4回転を跳ぶことができないため、トリプルアクセルが紀平のアドバンテージになるという見方もできる。さらに紀平は、世界選手権開幕一週間前に応じた取材で、ジャンプの難度を上げていることを明らかにした。スイスで練習しているフリーの構成では、冒頭に4回転サルコウを跳び、1本目のトリプルアクセルには2回転トウループをつけて連続ジャンプにし、後半に2本目のトリプルアクセルを組み込んでいるという。

 ロシア選手権で優勝したシェルバコワ、3位に入ったトゥルソワ(※2位のワリエワは年齢制限により今季はシニアの国際大会に出場できない)に次ぐ3人目の代表に選ばれたエリザベータ・トゥクタミシェワは、今季の世界選手権ロシア代表の中で、唯一トリプルアクセルを試合で継続的に跳び、成功させている選手だ。

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