キワモノだった「タモリ」が今でも芸能界に君臨できる理由 早くに「有害な男らしさ」を封印

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 コロナに終始したこの1年。その余のことは後回しにされ、あたかも時が止まったかのようである。しかし無論、時計の針は確実に進んでいる。それはお笑いの世界も変わらない。第7世代どころか第8世代と言われる若手芸人たちが台頭し、下剋上が……。否、「巨頭」はなお健在である。

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 今月7日に生放送された「R-1グランプリ」では「ゆりやんレトリィバァ」が優勝し、さらなる高みに上る切符を手に入れた。他にも「M-1グランプ」や「キングオブコント」といったお笑いコンテスト番組が乱立し、これらを踏み台にのし上がっていく若手芸人の活躍が目覚ましい。

 だが、この下からの押し上げにビクともしないのが「ビッグ3」だ。タモリ、たけし、さんま。いずれも第一線を走り続けている。

 なかでも、たけしが「毒」、さんまは「しゃべくり」と、変わらぬ芸で笑いを取り続けているのに対し、タモリ(75)はちょっと違う。なんでもその昔、「タモリは江頭2:50だった」というのだが……。

 現在のタモリは、「ブラタモリ」や「タモリ倶楽部」で博識ぶりを披露し、派手なことは一切せずに笑いを巻き起こしている。その好々爺然とした姿には、もはや「国民のおじいちゃん」とでも言うべき雰囲気すら漂う。しかし、かつては全く異なる芸風だったことは忘れられがちだ。

「有害な男らしさ」を封印

「タモリさんが世に出てきた頃、僕は子どもでした。当時のタモリさんはアングラ芸人。片目に眼帯で上半身裸。イグアナのモノマネをするなど、子どもの目から見ても怪しいおじさんでしたね。タモリさんに対する当時の世間のイメージは、イロモノの一語に尽きます」

 こう振り返るのは、『タモリ論』(新潮新書)の著者で作家の樋口毅宏氏だ。そんなアングラ芸人タモリが、「笑っていいとも!」の司会に起用されたのは1982年である。

「徳光和夫さんが、『今で言うとエガちゃん(江頭2:50)がお昼の番組の司会をやるようなもの』と喩(たと)えていましたが、言い得て妙。夜の遅い時間帯の番組に出ていた人が、いきなり昼の顔になったんです」

 事実、芸能記者曰く、

「脚本家の三谷幸喜も、ラジオ番組で『昔のタモリは過激芸で売る江頭2:50説』を唱えたことがある」

 また、いいとも以前のタモリの論評記事を繰(く)ると、

〈タモリ――危険なパロディスト〉(「現代」77年4月号)

 といった具合に、まさにイロモノ扱いされ、バッシングされることもしばしばだったのだ。それが今や「国民のおじいちゃん」である。

「80年代は毒舌が許された時代でした。タモリさんも『Toxic masculinity(有害な男らしさ)』で売っていた時代があったんですよね。しかし、長く芸能界をサバイブできる人はやはり違って、悪口や下ネタなどの芸風は控えていった。そして、物知りである点など、徐々に賢者ぶりをアピールしていき、世間も遅れて『タモリはインテリなのかもしれない』と気付きだしたんです」(樋口氏)

 過去のバッシングをものともせず、唯一無二の立場を築いたタモリ。

週刊新潮 2021年3月18日号掲載

ワイド特集「変な噂 悪い噂」より

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