「韓国企業」が日本進出・再進出を目指す理由…ネイバー、現代自動車、三養食品の例から
「ネット通販検索」70%のシェア
2019年の日本製品不買運動と新型コロナウイルスが拡散した影響で、日系企業が次々と韓国から撤退するなか、韓国企業の日本進出が相次いでいる。手を挙げる韓国大手のインターネット通販「ネイバー・ショッピング」や現代自動車、即席麺メーカーの三養食品を例にその理由を見てみよう。
ソフトバンクグループ傘下のZホールディングスとLINEが経営統合した3月1日、LINEの親会社である韓国ネイバーの韓聖淑(ハン・ソンスク)代表は、「スマートストアの技術と販売者の多様性を尊重する姿勢が、日本のeコマース市場に新たな流れを作り出すことに期待する」と述べ、ネットショッピングを日本で展開する意向を表明した。
韓国は、世界有数のインターネット通販大国だ。
Gマーケット、オークション、11street、クーパン、インターパーク、ティーモンなどネット通販会社が乱立しているのだが、その背景にはオフライン市場の閉鎖性がある。
韓国のデパートは、テナント方式が主流で、販売員の派遣など入店者負担が大きい。
スーパーは確実に売れる商品のみを取り扱い、コンビニの販売商品は加盟店が選択する。
メーカーがフランチャイズ本部に登録料という名の高額な上納金を納めても、売上どころか、店頭に並ぶ保証すらない。
オフライン流通は、資金力と商品の認知度が不可欠であり、後発の中小事業者にとっては狭き門なのだ。
他方、大手ネット通販は、登録料や利用料が無料で、出店者は販売手数料を負担するだけで良い。
さらに、消費者には、デパートや大手スーパー、コンビニなどのオフライン商品は高額という認識が根付いており、店頭で商品を一旦確認した後、ネット通販で購入する例が少なくない。
そんなネット通販のなかでもネイバー・ショッピングは、同社が運営するサイトの商品に加えて、他の大手サイトの商品も検索できることから、韓国の「ネット通販検索」に関して70%以上のシェアを誇る。
3度めの挑戦
ネイバーは、これまで2度、日本に進出した。
サムスンのベンチャー事業として誕生したネイバーは、99年にサムスンから独立。
事業が軌道に乗る前の2000年、日本に進出して検索サービスを開始したが、2001年に米グーグルが日本に進出し、2005年にMSNが日本語サービスを開始すると収益が伸び悩み、日本語ポータルサービスを終了した。
2007年、ネイバーは日本事業を再開すると発表。チャレンジ精神旺盛だということだけではなく、韓国で最も日本依存度が高いサムスンのDNAを受け継いていることもあるのだろう。
09年に「ネイバーまとめ」を開始し、翌10年にはライブドアを買収。
ネイバーまとめは開始2年目に月間ページビュー1億2000万、ユニークユーザー943万人を記録するなど高い人気を誇ったが、著作権侵害問題が噴出し、2020年、サービスを終了した。
ネイバーは、韓国では検索サービスをはじめ、あらゆる情報を提供する。企業の業績や政治家、芸能人の命運もネイバーに掲載された記事に左右される。
韓国警察もネイバーが開発した翻訳アプリのパパゴ(Papago)を外国人とのコミュニケーション手段として公式採用するなど、大きな影響力を持っている。
その一方で、日本をはじめ、韓国外ではLINEが事業を牽引する
2011年3月、出張先の東京で東日本大震災の被災者が家族や親戚などと連絡を取ろうとする姿を目にした李海珍(イ・ヘジン/現在、ネイバー、LINEなどの会長)は、韓国で普及していたカカオトークを模したLINEサービスを発案し、子会社のNHN Japanが開発を担当した。
LINEは東京に本社を置く日本企業という立場だが、ネイバーもまた中心軸を韓国から日本に移す戦略を立てている。
ネイバーの幹部会議で最も使用頻度が高い外国語は日本語で、役員会議は30%が日本語といわれており、日本語を勉強する職員も増えている。
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