専門家が中国「全人代」を分析すると… 「完全に方向性を見失っている」

国際 中国

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 今月5日、中国の国会に当たる第13期全国人民代表大会(全人代)第4回会議が幕を開けた。

 年に1度、北京の人民大会堂に3千名近い代表が集う全人代は、中国の立法府でありながら、行政や司法を従える最高権力機関でもある。この最大にして最強の“議会”に見る、習近平(67)政権の、あまりに身勝手な建前と、絶句せざるを得ないホンネとは……。

 国際部記者によれば、

「今年の全人代でも、香港の選挙制度の改革や、内モンゴル自治区での少数民族同化政策など、強硬路線が目白押し。ただ、トランプ政権時代に見られたアメリカの保護主義への批判を封じ、“米中の貿易関係を深める”などアメリカに秋波を送る場面も。日本についても、王毅外相が会見で“対日関係を重視している”と発言していました」

 なんともチグハグに見えるが、神田外語大学の興梠(こうろぎ)一郎教授は、

「全人代を見ると、習近平政権は、完全に方向性を見失っているように見えます。香港問題一つとっても、今回の“愛国者による統治”は改革ではなく後退。イギリスまで敵に回すことになり、イギリスは、ウイグル問題などでもより厳しく中国を批判するようになりました」

 国際社会との関係改善を仄めかす一方で、国際社会の反感を進んで買おうとする中国。

 ある中国ウォッチャーも、

「対日関係も支離滅裂。王毅外相は会見で、対日関係について前向きな表現をしていましたが、一方で、全人代開幕直前の今月1日、中国の国防部は、中国公船の尖閣諸島周辺における領海侵犯について“今後も常態化していく”と声明を出しているのです。中国のホンネがどちらにあるかは明白です」

 さらに、

「国防部はロシアとの軍事同盟まで匂わせていますが、これがアメリカに対する牽制なのは明らかでしょう。さらなる長期政権を目指す習氏は、求心力を維持するために台湾統一を目論んでいると言われている。その障壁となるアメリカの出方は、常に窺っておく必要があるのです」(同)

 来年秋に行われる中国共産党の党大会では、習氏の党総書記再任に注目が集まる。

 興梠氏は、

「中国が不合理な強硬路線を突き進むのは、習氏が自身の権力を強固にするために不安定要因を排除しようとしているからに他なりません。国防費の増加にしても、軍事力強化だけでなく軍における求心力を維持したい思惑もあるのでしょう」

 国際社会に悪夢をもたらすばかりの中国。

週刊新潮 2021年3月18日号掲載

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