センバツ優勝候補筆頭の「大阪桐蔭」、強すぎる常勝軍団はこうして作られる

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控えの選手までも

 また、試合中のプレー以外からも大阪桐蔭の強さを感じることが少なくない。まず他のチームとは圧倒的にレベルが違うのが守備力の高さだ。公式戦の場合、試合前に7分間のシートノックを行うが、甲子園に出場するチームの中でもその精度は明らかに頭一つ抜けている。

 しかもレギュラーだけではなく、背番号二桁の控えの選手までも大学生かと思うようなプレーを見せている。それは決して派手なプレーをするというわけではなく、一つ一つの動きが素早く、正確ということである。トーナメントの場合、特に一つのミスが命取りになることが多いが、それを極力排除しようという意思がチーム全体から感じられる。強力打線や150キロを超える投手が話題になることが多いが、大阪桐蔭というチームの伝統と言えるのは実はこの守備なのかもしれない。

 また、相手チームの分析についても相当な時間を費やすと言われている。18年秋の近畿大会では明石商のエース、中森俊介(ロッテ)を打ち崩して逆転勝利を収めたが、この時に石田コーチと橋本翔太郎コーチの2人が話していた内容からもかなりの対策をしてきたことがよくうかがえた。

 こうした取り組みの背景にあるのは、決して驕らない姿勢ではないだろうか。試合後の西谷監督のコメントを聞いていても、常にまず相手チームを称え、傍目に見ている分には、快勝に見える時でも展開次第ではどうなっていたか分からなかったと話すことが多い。能力の高いメンバーを揃えて鍛え上げ、相手を徹底的に研究してもなお隙を見せない、そんな意識がチームに浸透していることがこういった発言からもヒシヒシと感じられる。

 3月19日に開幕する選抜高校野球の初戦は、秋の近畿大会で敗れている智弁学園に決まり、同じゾーンには他にも有力校がひしめいている。優勝への道のりは決して平坦なものではないが、その中でも王者としてどんな戦いを見せてくれるのか注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月17日掲載

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