センバツ優勝候補筆頭の「大阪桐蔭」、強すぎる常勝軍団はこうして作られる
みんな入学するわけではない
現在の高校野球界でトップのチームはどこかと問われれば、10人中10人が大阪桐蔭と答えるのではないだろうか。2018年には史上初となる2度目の春夏連覇を達成。西谷浩一監督が就任して初めて甲子園を制したのは2008年夏だが、そこから10年以上全国トップのチームであり続けている。この期間ほぼ毎年プロに選手を送り出しており、チームの主力に定着している例も多い。甲子園で勝ちながら、一流選手を輩出するという意味では1980年代のPL学園と双璧と言えるだろう。
大阪桐蔭の強さが話題となると、まずその理由として挙げられるのがスカウティングだ。侍ジャパンのオフィシャルサイトには2013年以降U15の代表チームに選ばれたメンバーの一覧が掲載されているが、その185人のうち13人が大阪桐蔭に進学しており、これは最多の数字である。
しかしよく見てみると、そのうち8人は現在の1年生からこの3月に卒業する3年生に集中しており、それ以前の数では突出して多いわけではない。力のある選手を積極的に集めているのは、決して大阪桐蔭だけではないのだ。
昨年12月に行われた関西地区の中学硬式野球チームナンバーワンを決める『タイガースカップ』にも大阪桐蔭の西谷監督、石田寿也コーチが姿を見せていたが、東海、北陸、東北など関西以外の強豪校の指導者たちも同様に顔を揃えていた。
この時に石田コーチと話す機会があったが「最近では違う高校に行く子まで大阪桐蔭に行くという噂が流れることもあります。本当にそうならいいと思うこともよくありますね」と苦笑いしながら語っていた。石川昂弥(東邦→中日)には西谷監督も熱心だったと言われているが、結局は地元愛知の東邦に進学している。声をかけた選手がみんな入学してくれるわけではないのだ。
OBが練習に
もちろん、力のある選手が多く入ってくることは強さの理由の一つには間違いないが、それ以上に大きいのが選手を見る基準が明確だということである。以前、西谷監督はインタビューで中学生を見る時のポイントとして、初球のストライクを簡単に見送るような選手は大阪桐蔭の野球に合わないということを話していたが、積極的に打てる打者を揃えて打ち勝てるというチームのスタイルが確立されているからこそ出てくる言葉だろう。
実際にプロで活躍しているOBも中田翔(日本ハム)、浅村栄斗(楽天)、森友哉(西武)など甘いボールを逃さず打てる選手が多い。いわゆる、そういったチームとしての“ブランド”が確立されており、それにマッチした選手が入部してくるという好循環が生まれている。
入部してから選手が着実にレベルアップしているという点も大阪桐蔭の強みであるが、その要因の一つが“個人”にスポットを当てた練習方針だ。特に秋季大会が終わった後の対外試合が禁止されている期間は、“個人の力を上げる期間”と位置付けており、レギュラー争いを一度白紙に戻してチーム内の競争を煽っている。
このオフの期間にはプロや社会人で活躍しているOBが練習に顔を出すことも多く、高いレベルの選手のプレーに直で触れることで現役選手の意識も自然と高くなる。春以降は組織力を上げる期間として、チームとしての完成度を上げるための練習が多くなるというが、このように時期によって選手と組織の強化を明確に分けて行っているのは有効なメソッドといえそうだ。
[1/2ページ]