元慰安婦は今度は国務長官に抱きつくのか 米国の怒りを報じない韓国メディアの歪曲報道

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 米国が韓国に「米国か、中国か」と踏み絵を迫る。追い詰められた文在寅(ムン・ジェイン)政権は「日本」を言い訳に逃げ回りそうだと韓国観察者の鈴置高史氏は読む。

慰安婦合意を破ったな

鈴置:米国務省が「いつまで慰安婦を問題化するつもりか」と公開の場で韓国政府を叱りました。3月12日の定例会見での出来事です。

 聯合ニュースの記者が「A・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官が来週(※17~18日)訪韓する。その際に会いたい、と93歳の元慰安婦が手紙を出したが、面談は検討されているのか」と聞きました。

 これに対するN・プライス(Ned price)報道官の答から、ポイントを引用します。

・We have long encouraged Japan and South Korea to work together on history related issues in a way that promotes healing and that promotes reconciliation. As we stated at the time, we welcome specific efforts, including the 2015 Comfort Women Agreement, as an example of the two countries’ commitment to forging a more productive and constructive bilateral relationship.

 米国は長らく日韓に歴史問題を解決するよう求めてきた。米国は2015年の慰安婦合意など具体的な努力を歓迎する。それは両国がより生産的で建設的な二国間関係に進むとの合意の好例である――と言ったのです。

 プライス報道官は外交的な修辞にくるみましたが、日韓は2015年の慰安婦合意を通じ歴史問題を解決した。韓国は蒸し返すのか、と怒ってみせたのです。

 さらに、「ブリンケン国務長官は当時、国務副長官として慰安婦合意の当事者であり、多大の努力をした」とも述べました。以下です。

・When it comes to that agreement, when it comes to the trilateral relationship, it was at the time Deputy Secretary of State Anthony Blinken who was at the center of brokering some of these efforts.

「韓国が慰安婦合意を破ったことを我々は覚えているからな」とクギを刺したのです。当事者だったのは国務長官だけではありません。

「猿芝居はやめろ」と一喝

 当時、副大統領だったJ・バイデン(Joe Biden)大統領は「自分は慰安婦合意の保証人だった」と明かしています(「かつて韓国の嘘を暴いたバイデン 『恐中病と不実』を思い出すか」参照)。

 バイデン政権で国務副長官に就任したW・シャーマン(Wendy Sherman)氏も当時は国務次官。「歴史カードを振り回すな」と韓国を批判したこともあります(「『バイデンから電話が来ない』と気を揉む韓国人 原因は『習近平コール』か、それとも――」参照)。

 文在寅政権にとって運が悪いことに、バイデン政権には慰安婦合意の関係者がズラリと揃った。韓国は合意をいとも簡単に破棄した無法国家と米国の新政権から見なされているのです。

 中国包囲網への参加から逃れるために「日本が慰安婦で謝らないので日米韓の安保協力ができない」と誤魔化す韓国の常套手段も、米政府はすっかり見抜いています(「慰安婦問題を言い続けるなら見捨てるぞ 韓国を叱りつけたバイデン政権の真意は」参照)。

 プライス報道官の答は過去の事実がきちんと盛り込まれたうえ、論理構成も整っています。韓国記者の質問に備えていた印象です。「猿芝居はやめろ」と一発かますチャンスを待っていたのでしょう。

 1月9日、バイデン政権の韓国担当者が東亜日報に対し「韓国が日本との関係を改善しないのなら、米国は韓国に対する役割を果たさない」と脅しました(「慰安婦問題を言い続けるなら見捨てるぞ 韓国を叱りつけたバイデン政権の真意は」参照)。

 ただ、その時は匿名での発言。今回は公式の会見です。「慰安婦カードは捨てろ。はっきり言っておくからな」と通告したのです。

「慰安婦」で時間稼ぎ

――米国の怒りに文在寅政権は気付いている?

鈴置:さすがにバイデン政権が「合意破り」に怒っていることは分かっています。だから突然、1月18日の会見で文在寅大統領が「慰安婦合意は有効である」と言い出したのです(「韓国人はなぜ、平気で約束を破るのか 法治が根付かない3つの理由」参照)。

 しかし、白旗を掲げたわけではありません。「歴史問題で対話しようにも、日本に拒否されている」と被害者イメージを振り巻く戦術に転換しただけです。

 3月1日に文在寅大統領が「我が政府はいつでも対話する用意ができている」と述べたのはその一環です(「独立式典で『文在寅』が猿芝居 韓国大統領選挙の底流を読む」参照)。

「対話の用意がある」と唱えれば、「慰安婦」を含め歴史問題は未解決と国際社会に認識させることができる。そして米政府には「未解決であるから、日本と軍事的なスクラムは組めない」→「中国包囲網にも加われない」と弁解しているつもりなのです。

――そんな屁理屈が通ると思っているのですか?

鈴置:韓国とすれば時間を稼げればいいのです。「歴史問題は未解決だ」と言い張れば、米国が日韓の仲介に乗り出してくれるかもしれない。その間は、米国も韓国に「米中どちらをとるのか」との踏み絵を突き付けにくい、と期待しているのでしょう。

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