「V6」解散で考える、「ジャニーズ・アイドル」それぞれの身の振り方の具体例
関ジャニ∞の発言
存続における考え方として、興味深いのは関ジャニ∞の発言だ。
関ジャニ∞は2004年に8人でCDデビューし、現在は5人で活動をしている。
メンバーの横山裕は今年、村上信五は来年で40代になり、他の3名も30代中盤~後半のV6やTOKIOより少し下の世代のグループだ。彼らは2021年になってこんな発言をしている。
「16年以上も活動を続けていると、新しい目標を持つことって難しい」(大倉忠義)
「もう“数字を上げるための頑張り”とかってことではないので、年齢的にも」(村上信五)
「正直、僕らもいい年やし、ずっと枚数が右肩上がりで行けるはずなんかないってどっかでわかってるんです。人気なんか絶対いつか落ちるやろうけど、でもかっこよく生き残らないと」(横山裕)
ここで彼らは、数字だけに重きをおいているわけではないこと、売上を伸ばし続けることがすべてではないと感じていることを語っている。(*1)
もちろん、そんな中でも、横山の言う通り、かっこ悪くはならないことを自らに課している。
アイドルとして年を重ねる中で、数字という意味において上昇飛行をし続けるのではなく、自分たちとファンにとっての居心地のよい場所を探し、ゆるやかに着陸しようとしているようにも見える。
ひとつの目標を達成したらまた新しい目標を掲げることや売れ続けることが全てではない。
A.B.C-Zの戸塚祥太は同じメンバーの河合郁人や塚田僚一を「競争社会で生きていけるタイプの人間」と語っていたが(*2)裏を返せば自身はそうではないということで、競争し続けることにプレッシャーを感じるタレントもいるだろう。
ジャニーズ事務所時代、病気の療養期間をとった今井翼も「僕の思う100%は他の人の120%」として、医師からあまり頑張りすぎないように諭されたことを語っている。(*3)
拙著のタイトルに象徴させてしまったが「努力することが当たり前」の人たちがジャニーズには集まっているし、そのための環境も整っている。
もちろん、ライバルと切磋琢磨し続けることは特にアイドルとして世に出ようとする時期においては必要なことだろう。
しかし、30代、40代となったアイドルにとって、“競争をしないこと”もひとつの選択肢なのではないだろうか――。
いや、成熟した者たちが数字の上での成長を求める必要がないのは、アイドルに限ったことではないかもしれない。
40代以降もアイドルを続ける者たちがどう人生を歩んでいくのか――。ひとつのかたちを関ジャニ∞は自ら模索しているように感じる。
堂本剛のことば
もちろん、関ジャニ∞が全てというわけではない。それぞれのグループにそれぞれの正義がある。
V6はすでに全員が40代、最年長の坂本昌行は今年50歳になる。
14歳でV6に加入した岡田准一は、デビュー25周年を迎えた昨年「みんなの幸せを願えるようになるじゃない、年を重ねていくと」と、10年、20年と時を経たことで、メンバーのことを考えられるようになったと語っていた。
この時点で「俺らひとりでも抜けたらV6はない」と、解散発表のコメントに近い宣言もしている。(*4)
事務所の発表コメントも「6人にとって、メンバー全員が40歳を迎えて向き合うV6の節目は、人生そのものと向き合うことを意味しておりました」と書かれており、それぞれが自分の人生、そしてメンバーの人生、そしてその幸せを真剣に考えた上での決断であることが垣間見える。
近年、岡田は映画が中心、森田は舞台が中心の活動となっている。
観客数という観点で接点が多いのは映画のほうなので、どうしても世間は岡田の方を「売れている」としがちだが、きっと本人たちはそんな尺度で自分たちを見ていないだろう。
岡田は自分のことは天才じゃないとした上で「うち(V6)の森田剛くんも天才の部類に入ると思います」と評している。(*5)
ジャニー喜多川が亡くなってしまったから事務所を去る者もいるだろうし、逆に亡くなってしまったからこそ、自分たちでその遺伝子を受け継いでいこうとする者もいるだろう。
どちらが称賛されるべきというわけでもなく、それぞれの人生である。
堂本剛は昨年末、タレントがジャニーズ事務所を離れていくことに関して聞かれ、こうコメントしている。
「その人の人生を第三者がどうこういう次元の話ではないです(中略)自分には自分にしかない人生がある。出会った人たちとこれから出会う人たちとの一回限りの人生をいかに優しく、強く生きていくかだけです」(*6)
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