米医師連盟が「コロナの特効薬」 なぜ政府は「イベルメクチン」を規制するのか

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米医師連盟が「コロナを解決する特効薬だ」

 実は本誌(「週刊新潮」)は昨年5月、イベルメクチンに新型コロナ撲滅への期待がかかる、と報じていた。同様に早い時期から、この薬に期待を寄せていたのは、作家の楡周平氏である。

「今回注目したのは、オーストラリアの大学の研究で、試験管レベルですが、イベルメクチンが新型コロナウイルスを99%減少させ、ほぼ無力化したと知ったからです。続いて、米ユタ大学も昨春、新型コロナの感染者に投与したところ、大きな効力を発揮したという論文を出しました。ただ、この論文はデータのとり方に問題があったとして、取り下げになりましたが」

 そう語る楡氏は、イベルメクチン自体には、かなり以前から注目していたと言って、こう続ける。

「北里大学特別栄誉教授の大村智先生が、伊豆でもとになる菌を発見しています。ところが、その菌は1回きりしか見つからなかったので、大村先生は“神様の贈りもの”という言い方をしていました。これのおかげで、寄生虫によって引き起こされるアフリカの目の病、オンコセルカ症をほぼ撲滅できたのですが、エイズやほかの感染症にも効くという話も聞こえてきます。新型コロナに対しても、バングラデシュやインド、カンボジア、ペルーにブラジル、または東欧から、イベルメクチンが絶大な効果を発揮している、という話が聞こえてきます。アメリカにはFLCCという、新型コロナに関する医師の連盟があり、昨年12月、そのトップが上院の公聴会に呼ばれ、イベルメクチンはコロナを解決する特効薬だ、と証言しています」

 アフリカで感染爆発が起きなかったのも、イベルメクチンを飲んでいたからだ、という見方もあるようだ。ただ、楡氏は現状に不満で、こう加える。

「本当に効くなら、早急に使わせるべきです。筋がいい解決策は、意外に足元に落ちているんです。しかし、東京都医師会の尾崎会長が、自宅療養中の患者に配布すべきだと提言し、国会でも菅総理が関心を示したのに、動き出す気配がない。メディアもほとんど報じません。私はことあるごとに、報道関係者に“イベルメクチンはどうなっているんですか”と聞いていますが、だれも知りません」

大阪の製薬会社に300万人分の備蓄が

 事実、イベルメクチンは国会で取り上げられていた。2月17日、衆院予算委員会で立憲民主党の中島克仁議員が、「わが国では疥癬で保険適用になっていて、適用拡大に向けての治験の最中」と紹介し、通常のプロセスでは承認まで1、2年はかかるが、「東京都も治験に協力する姿勢なのだから、国も早期承認できるように治験をバックアップすべきだ」と提言したのだ。

 これに対し、田村憲久厚生労働相は「適用外使用ではいまでも使える」などと返答。菅義偉総理は「日本にとって極めて重要な治療薬と思っているので、最大限の努力をします」と、前向きに答えたのである。

「私は医師で、また大村智先生は同郷かつ高校の大先輩ですので、先生には流行初期の昨年3月ごろからご意見を伺っていました」

 と話すのは、質問した中島議員である。

「大村先生は2012年ごろから、イベルメクチンは抗寄生虫薬だが、エイズやデング熱への抗ウイルス作用があると話されていました。昨年末までに新型コロナへの効果に関し、35の研究成果が世界で出され、ペルーの報告では予防効果も認められています。感染対策の両輪はワクチンと治療薬。昨年末、在宅療養者は3万人を超え、私も医師として対応しましたが、40度の高熱がある人に薬も出されない現実を目の当たりにしました。イベルメクチンは治験段階ですが、過去40年間、世界で毎年3億人ほどが使い、安全性が確立されています。日本発の安全な薬に対し、海外で治験が進むなか、日本はほかの薬と同等のスキームで治験を進めていていいのか。このままではワクチン同様、周回遅れになってしまいます。海外で先に承認されるようなことになれば、本当に恥ずかしい。ですから、治療薬もしくは標準治療として確立できるよう、国策として取り組むべきではないか、と提言したのです」

 厚労相と総理の答弁には、どんな感想をもったか。

「厚労大臣は“いまでも使える”と言っていましたが、ふざけた話で、販売が規制されているので使いたくても使えません。また治験中の薬に対し、治験中でも使える、といった発言は研究者をバカにしています。ただ、菅総理の発言は、海外から“日本はイベルメクチンを治療薬として確立すべく動き出した”と捉えられてもおかしくない。大村先生も私に、“大変力強い言葉だった”というコメントをくださいました。言ったからには具体的に示すよう、求めていきます。現在、大阪の製薬会社マルホに、300万人分ほどの備蓄があるようなので、それを全部出せるように、議員立法で省令を改正するということも考えています」

副作用がなく、少量で効く

 だが、安倍晋三前総理が昨年4月、承認への強い意欲を示したアビガンでさえ、胎児に奇形が生じる副作用が懸念され、いまも承認されていない。中島議員は、

「いままで治療薬に関する厚労省の返答は、“やっています”“治験段階です”に終始してきた。治療薬でわが国が先頭を切ることをあきらめている、とさえ感じてしまいます」

 と呆れ顔である。試みに厚労省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課に聞いたが、

「特に企業から、承認を申請されているといった状況ではないと思います。現在、北里大学を中心に治験が行われていると思いますので、その結果を見て、どうするか企業が判断されるものだと思います」

 と、冷めた返答だ。

 1月に緊急事態宣言が出され、いまも首都圏で解除されないのは、つまるところ「命を守るため」であった。主として高齢者や基礎疾患がある人の「命を守るため」に、倒産や失業、さらには自殺が増えるのもやむなし、と判断されたのである。このように国民に多大な犠牲を強いて「命を守る」という局面で、有効な治療薬の承認に厚労省がこうも消極的であるのは、どういうことなのか。

 過去の度重なる薬害訴訟がトラウマになり、厚労省は新薬の承認に後ろ向きだといわれるが、わずかなリスクを恐れて目の前の病人を見殺しにすることが、なぜできるのだろうか。

週刊新潮 2021年3月11日号掲載

特集「『コロナワクチン』確保失敗でも大丈夫 『自宅療養中の急死』も防ぐ特効薬『イベルメクチン』」より

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