巨人移籍の「廣岡大志」、智弁学園時代は先輩「岡本和真」を差し置いて4番を打っていた

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 田口麗斗投手との電撃トレードで読売ジャイアンツの一員となった廣岡大志内野手に大きな注目が集まっている。主砲としてチームに君臨する岡本和真が、智弁学園(奈良)の1学年先輩だったという点も注目される理由のひとつだが、実はこの2人、智弁学園の主軸として、2014年の甲子園大会に春夏連続出場を果たしているのである。

 廣岡が智弁学園に入学したのは、13年春のこと。直後の春の県大会からいきなり外野手としてベンチ入りを果たすことになった。春の近畿大会1回戦の箕島(和歌山)との試合では、9番・レフトで途中出場し、レフトスタンドへ特大のソロアーチを放っている。

 当時からその打球速度と選球眼の良さがセールスポイントで、岡本に並ぶスケール感の持ち主として、将来性を小坂将商監督から高く評価されていた逸材であった。

 1年秋にサードのレギュラーの座を掴むと、チームも近畿大会でベスト8まで進出し、翌14年春の選抜への出場を決めることとなる。その春の選抜で智弁学園が1回戦で対戦したのは、同年の夏の甲子園準優勝校となる三重であった。しかも、この強敵相手の大事な初戦で廣岡は、先輩の岡本を差し置いて4番に抜擢されるのである。そしてその期待に見事に応えた。

 初回の第1打席こそ三振に倒れたものの、1-0で迎えた4回表には、一塁に岡本を置いて甲子園初ヒットを放っている。変化球に上手く対応して三遊間へ運んだ打球だったが、この一打でチャンスを拡大したチームはこの回さらに3点を追加し、4-0と試合の主導権を握ることに。5-1で迎えた8回表には1死二塁のチャンスで打席が回ってくる。すると、ここでも外角低めのチェンジアップをうまく拾って、三遊間を破るレフト前タイムリー。試合を決定づけたのであった。

 結局、初の甲子園で4打数2安打1打点と活躍し、チームも7-2で快勝。近県対決を制しての初戦突破となった。ただ、この試合の真のヒーローは3番に座っていた岡本だった。第1打席でバックスクリーンに、第3打席ではレフトスタンド中段に……と1試合2本塁打をマークしたのだ。プロ注目の超高校級スラッガーの、まさに面目躍如であった。

 続く2回戦で廣岡は1番を任されることに。相手はプロ注目の最速145キロ左腕・田嶋大樹(現オリックス)擁する佐野日大(栃木)である。もし、この好投手を相手に打てればその評価も変わってくる。プロを目指す上で、まさに試金石となる大事な一戦だった。

 結果は5打数1安打。それでも1本は田嶋の低め136キロのストレートに力負けせずにうまく捉えた一打であった。左中間フェンス際に弾き返す二塁打となり、その実力の一端をみせつけることとなったわけだ。かたや主砲の3番・岡本も4打数1安打1死球2三振と押さえ込まれる形となった。しかもチャンスで喫した2三振が致命的となり、延長10回、チームは4-5のサヨナラ負けを喫してしまう。ベスト8目前の惜敗であった。

最初で最後の甲子園ホームラン

 この試合から約4カ月後、智弁学園は夏の奈良県予選を勝ち抜き夏の甲子園への出場を決めた。その予選で5戦して4盗塁を決めるなど、俊足ぶりを発揮した廣岡は、初戦で7番・サードとして明徳義塾(高知)戦に挑む。相手のエースは大会屈指の好投手でプロ注目の右腕・岸潤一郎(現埼玉西武)であった。試合は6回を終わって智弁学園が3-4と1点を追う接戦となる。ところが、7回裏に1点を追加され、さらに2死一、三塁のピンチの場面で3ランを叩き込まれ、試合が決してしまった。

 が、廣岡は最後に意地をみせる。9回表1死から岸の外角へのカットボールを捉え、レフトスタンドに飛び込むソロ本塁打を放ったのだ。主砲の岡本は4打数2安打だったが、いずれも単打、しかも2三振を喫しているだけに、強烈なインパクトを残して甲子園を去ることとなったわけである。この1本が廣岡にとって最初で最後の甲子園でのホームランとなった。2年秋に結成された新チームではキャプテンでショートを任されるも、秋も夏も予選で敗退してしまったからだ。

 それでも振り切るスイングから左方向中心に鋭い打球を弾き返す右の強打者として活躍。なかでも印象的なのは3-5で惜敗した2年秋の県大会準決勝の天理戦と、11-0で大勝を飾った3年夏の県大会初戦の高田戦だった。前者では左中間スタンドに豪快な先制ソロを叩き込み、後者ではレフト芝生席に飛び込む特大の3ランを放っている。

 夏の高田戦では守備でも好プレーを連発し、プロのスカウト陣から長打力、守備面の成長を評価されたほどだった。1-4で敗れ、高校生活最後の試合となった天理戦でも最後の打席で痛烈に三遊間を破るレフト前ヒットを放ち、強烈な印象をプロのスカウトに残して去っていった。

 こうして身長183センチ、体重81キロとやや細身の体型ながらも、廣岡は強打のショートとして、その秘めた長打力と将来性が高く評価され、15年のドラフト会議で東京ヤクルトスワローズから2位指名を受けた。もっとも、昨年までのプロ5年間での成績は計236試合に出場して、打率2割1分4厘、21本塁打、54打点。高校時代の高い評価とは裏腹に、レギュラーを取れずにやや伸び悩んでいた。

 そんな“未完の大器”が約6年半ぶりに先輩の岡本のチームメイトとなった。この岡本の存在が大いに刺激となったのか、ようやく覚醒モードに入った。3月4日に行われた古巣・東京ヤクルトとのオープン戦で、移籍後初安打にしてチームのオープン戦第1号となる豪快なソロ本塁打を放ったのである。

 新天地での名刺代わり、古巣へは恩返しとなる一発は、打った瞬間に分かる特大の一撃となり、レフトスタンド中段まで飛んでいった。しかも投手が古巣のクローザーだった石山泰稚であったからその価値は大きい。

 新本拠地を沸かせたこの活躍で、吉川尚輝、北村拓己との正二塁手争いに一気に割って入ったようだ。“眠れる大砲”から“真の大砲”へ。廣岡の奮闘はまだまだ続く。

上杉純也

デイリー新潮取材班編集

2021年3月12日掲載

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