福島県は提訴 東京のタワマンにタダで住み続ける原発避難民はどうなった?
復興庁の発表によると、東日本大震災による、全国の避難者数は約4万1000人(2月8日現在)。中でも福島県では、2万8000人を超える県民が県外へ避難したままだ。帰りたいと願う人、帰りたくとも帰れないという人もいることだろう。実は、東京の国家公務員宿舎に自主避難したまま退去の求めに応じず、福島県から訴えられた避難者がいる。彼らは今後、どうなるのか。
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デイリー新潮はかつて、「タダで都内タワマンに住み続ける『福島原発避難者』を県が提訴、それぞれの言い分」(「週刊新潮」2019年10月31日号掲載)という記事を掲載した。
舞台は東京・江東区、タワーマンションが林立する一角、36階建ての国家公務員宿舎「東雲住宅」だ。震災時、災害救助法の適用を受け、東雲住宅も福島の避難者に無償提供された。ただし、期限は2年、17年3月末で打ち切られることになっていた。それ以後については、国家公務員と同額の家賃(1LDK:1万7000円~3LDK:5万9000円)を支払うことで2年間の猶予期間が設けられた。
江東区のタワマンともなれば、1LDKで20万円、3LDKなら30万円を下らない物件が多い。そもそも東雲住宅の家賃は、破格の安さなのだ。
ところが、その猶予期間を過ぎても、転居に応じない者がいたため、県は議会で彼らを提訴する議案を可決したのだ。当時、関係者はこう語っている。
「なお40世帯ほどが転居せず、うち5世帯は家賃の支払いも拒み、8年にわたって1円も払わず居座り続けています。そこで福島県議会は退去を求めて彼らを提訴する議案を可決したのです」
未納の家賃は、福島県の税金で賄われている。訴えには、東雲住宅からの退去と損害金の支払いも含まれていた。
4世帯を提訴
果たして、その後裁判はどうなったのだろうか。福島県生活拠点課に聞いた。
「昨年3月25日に、4世帯に対し福島地裁に提訴しました」
5世帯ではなかったか。
「19年9月期の県議会で提訴の議案は可決されましたが、その後も住民に対し説得を続け、年末には5世帯にも会うことができました。そこで、1世帯は自主的に退去されました。自ら移転先を見つけ、東京から転出されています。損害金についても毎月滞りなく納めてくれています。残る4世帯については明け渡しに応じていただけなかったため、提訴ということになったのです」
明け渡しはやむを得ない
提訴から1年が過ぎようとしている。判決は出たのだろうか。
「2世帯については福島地裁で裁判が続けられ、複数回の口頭弁論が行われました。しかし、まだ住民側からの主張が出尽くしていない状況です。残る2世帯については、東京地裁への移送の申し立てがあったため、今も審議中です」
裁判は継続中のようだが、こうした場合、どういう結果が待ち受けているのだろうか。みらい総合法律事務所の水村元晴弁護士は言う。
「コロナ禍もあって、今は裁判も時間がかかるのでしょう。震災の被害者という事情も考慮されるでしょうが、長期滞納の事実が明らかであるならば基本的には部屋の明け渡しを命じられることになると思います。家賃を1円も支払っていないのでは、県としても何とかせざるを得なかったのでしょう」
明け渡しの判決が下され、それに従わなければ強制退去ということになるのだろうか。
「もちろん、事情が事情ですから、まず退去を前提とした和解を勧められるでしょう。明渡しの猶予期間を設け、滞納家賃や損害金の分割支払いなどを決めるという方法です。県としても強制執行はしたくはないでしょうし」
もちろん同情の余地はあるものの、彼らは避難指示区域の住民とは異なる、自主避難した人々だ。前出の県生活拠点課は言う。
「4世帯の方にもそれぞれに事情があるとは思います。しかし、国家公務員宿舎に暮らすことができるのは国家公務員なんです。無償で住むことができたのは、あくまで災害時の特例です。県としても、これまで転居先の紹介をさせてもらってきましたが、ご希望の住居とはかなりの乖離があったようです。同じ福島県民として、提訴は苦渋の選択でしたが、震災から10年、すでに議論の余地はなくなりました。時間はかかるかもしれませんが、淡々と裁判を続けるしかありません」