田口麗斗はヤクルトでローテ入りも…巨人を出る喜びを知ってしまった男たち

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二桁勝利も狙える

 トレード以外ではFAの人的補償で移籍するケースも多いが、その中で飛躍したのが一岡竜司(広島)と平良拳太郎(DeNA)の2人だ。一岡は高校卒業後、専門学校の沖データコンピュータ教育学院でプレーしていたが、予選での好投が認められてJR九州の補強選手として都市対抗に出場。2011年のドラフト3位で巨人に入団した。在籍わずか2年で、大竹寛の人的補償で広島に移籍し、1年目から一軍の中継ぎに定着し、チームのリーグ3連覇に大きく貢献。勤続疲労から昨年は大きく成績を落としたものの、トータルの活躍度を考えると、巨人移籍後の大竹を大きく上回っていることは間違いない。

 一方、平良は北山高から2013年のドラフト5位でプロ入りし、巨人在籍3年で山口俊の人的補償でDeNAに移籍。故障もあって完全に一軍定着にはいたっていないものの、昨年は開幕からローテーション入りし、一時は防御率0点台という快投を見せてプロ初完投勝利もマークした。今年で26歳とまだまだ若く、一年を通じて投げられる体力さえつけば、二桁勝利も十分狙えるだけのポテンシャルは秘めている。

 もちろん、巨人から移籍してもそれほど活躍しないまま球界を去った選手も存在しているが、今回紹介した選手たちのように選手層の厚さと毎年補強を繰り返すチーム事情によって、才能の開花に蓋をしているケースもあるはずだ。田口自身は小学校時代からの巨人ファンということで、残念な気持ちもあるかもしれないが、再浮上するチャンスであることは間違いない。同じ東京をフランチャイズとする球団ということで、環境が大きく変わらないという点もメリットである。この機会をプラスととらえて、低迷するチームを浮上させる救世主となるような活躍を見せてくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月8日掲載

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