郵便局員が2億7千万円分の切手を横領 “荒稼ぎ”できる理由とは

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 デスクにうずたかく積まれた会議の資料を、1枚ずつシュレッダーで細断するのは気が滅入る作業に違いない。だが、それが資料ではなく切手だったらどうか。郵便局で相次いだ“錬金術”のカラクリとは。

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 2月16日、警視庁愛宕署は、港区・芝郵便局の元会計担当課長、細畑真佐樹(49)を逮捕した。2016年からの1年間に、郵便切手201万2500枚を金券ショップで百数回にわたって換金し、7500万円を横領した疑いが持たれている。しかも、

「警視庁が把握する実際の横領額はその4倍近く。約2億7千万円にのぼります」(社会部記者)

 最大の問題は、容疑者が換金していたのが“使用済みの切手”だった点にある。

 その手口はこうだ。

 まず、企業などが大量の郵便物を発送する際、機械(料金計器)を使い、封筒に切手の代わりとなる料金スタンプを押すことがある。たとえば、〈料金別納〉といった印字のことだ。企業側は郵便料金を予納金としてまとめて支払うことができ、切手を貼る手間も省ける。

 日本郵政の広報によれば、

「予納金を支払う場合は、切手で郵送料金を支払うことが可能でした。料金として受け取った切手は、担当者が消印を押し、即日、細断処分を行ってきたのです」

 今回の事件は、担当者が消印を押すのをサボり、それを確認する立場にあった元会計課長が着服する形で起きた。容疑者が懐に入れたのが、廃棄されるはずの使用済み切手だったせいで発覚が遅れ、荒稼ぎが可能となったわけだ。

脱税で告訴も

 日本郵政の広報が続ける。

「18年3月に、本人が“切手を換金して現金を得たことについて国税庁から話を聞かれている”と話していたことが分かり、内部調査によって問題が判明しました。その後、昨年11月に刑事告訴に至っています。本人は聞き取りに対し、“金はいずれ慈善団体に寄付するつもりだった”と語っています」

 実は昨年12月にも、大阪府・堺中郵便局の元総務部長が逮捕されている。同じく使用済み切手を買い取り業者に流し、1億3千万円を着服していたのだ。

 税理士の浦野広明氏は、

「一般企業でも、通信費などの名目で処理した切手を換金して裏金を作るのはよくある手口。今回は国税庁が金券ショップを調査した際、大量の切手を持ち込んだ人物に疑問を持ち、調査に乗り出したのでしょう。金券ショップでは買取時に身分証明書を控えますからね。たとえ犯罪で得たお金であっても、個人が得た収入は課税対象になりますので、容疑者が脱税で告訴される可能性もあります」

 仮に、郵便局員が使用済み切手を金券ショップで換金し、同じ店で企業関係者が切手を安く手に入れ、郵送料金の支払いに充てれば……。一昨年から切手による予納金の支払いは廃止されたが、それまで小遣い稼ぎをしていた局員も結構いたのではあるまいか。

 切手と裏金は切っても切れない関係にあったのだ。

週刊新潮 2021年3月4日号掲載

ワイド特集「噂の眞相」より

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