マスクのメリット、デメリットは分けて論じるべきでは 人がいないところで着ける意味って(中川淳一郎)

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 いやぁ~、マスク生活、もうイヤだ! 「コロナ感染を防ぐためにはマスクを!」という社会の風潮はあるものの、汗っかきにはマスクってもうとんでもなく不具合ばかり生じさせるんです。

 今、福島原発の取材を前にこの原稿を書いています。東日本大震災から10年ということで、「取材にいらっしゃいませんか?」とオファーをいただいたので私も取材することになりました。

 そして、取材をする条件として「PCR検査陰性」が求められました。こちとら佐賀県唐津市で「密」とは無縁な状態ですが、求められたのだから仕方がない。大都市、東京・渋谷でマスクをしながら、あいにくの雨の中を走ります。

 コロナのせいで唐津では「あなたは初めてのお客様ですよね?」と床屋で髪を切ってもらえなかったので。

 仕方ない。東京発の「コロナヤバ過ぎ!」情報がワイドショーで毎日のように流れているので、店員も常連客も心配しているのでしょう。

 そんな中、東京出張で千載一遇の髪の毛を切る機会が来た! しかし、PCR検査の時間が迫っているだけに、汗がダラダラ出ている状況ながら、店に入りました。顔にマスクがついていると、汗っかきは、本当にすさまじく汗をかきます。今はなき「TVチャンピオン」(テレビ東京)の「汗かき王選手権」にも出られるかもしれないほど、私は汗っかきです。

 10分で終わるお店ではあったものの、とにかくPCR検査を前にしているだけに、さっさと切らなくてはならない。そんな中、マスクをして渋谷を走り回った身としては汗がダラダラと出ているんですよね。

 マスクさえなければ、ここまで汗は出ていない。結局何が起こったかといえば、「10分カット」なだけに、お店に迷惑をかけてはいけない、とばかりに事前にトイレに行って顔を洗ったりすることもなし。途中、タオルを出してもらい、顔を拭いたのですが、焦る気持ちも相まって汗はダラダラと出続けます。

 なんでこんなに汗が出るんだよ! と腹立たしさを覚えるも、すべてはマスクのせいなのです。マスクを着けて走り、焦りを覚えるととんでもない量の汗をかくのです。

 床屋の方には本当に迷惑をかけました。あのね、そろそろマスクについてはメリットとデメリットを分けて論じる時期に入ったのではないでしょうか? 私がいる佐賀県みたいなド田舎でも、300m先にいる高齢者が律義にマスクを着けています。多分、周囲にコロナウイルスはおりません。PCR検査の結果も陰性でした。

 それなのにマスクを着けている。今回、渋谷でも、ザンザンと雨が降っている中、人通りはあまりない。しかも床屋の方も「マスクを着けていると髪の毛が付いて面倒になるので、マスクは外しても大丈夫です」と言う。

 こうした状況は理解しつつも「マスクを着けない者は非国民」的な「圧」により私は初め床屋でマスクを着け、その後に外してカットしてもらいました。

 しかし、ずーっとダラダラと汗が流れ続け、カットする人からは「ちょっと、汗が多いので、髪の毛をこの吸引機では吸いきれないと思います。後でちゃんと洗ってください」と言われる事態に。ヘンテコな世の中だ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2021年3月4日号掲載

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