1カ月延長案もあった「緊急事態宣言」延長までのやりとり、「五輪決定」「補選」…菅政権の命運
3月5日、1都3県に出されている緊急事態宣言が2週間延長されることになった。菅義偉首相と関係閣僚らは宣言延長を協議する中で、「1カ月延長」案も取り沙汰されたという。1月の宣言発令やワクチン手配など、コロナ対策が後手に回っている印象の菅首相。五輪開催決定や補選など、政権の命運を握る課題が続く春をどう乗り越えるか。
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西村大臣は慎重派
政治部デスクに解説してもらうと、
「1都3県の感染者の減少ペースが緩くなっていますし、ウイルスの季節的要因を別にすれば、3月は終業式や卒業式を控えていたり、歓送迎会や花見の季節だったりして、感染者が普段よりも増える可能性が高い。その見立てから、早い段階で緊急事態宣言の延長自体は政府内で検討されてきました」
1都3県の首長らも、「宣言延長の要請」を調整中と報じられてもいた。
「3月2日、菅首相、田村憲久厚生労働相、赤羽一嘉国土交通相、加藤勝信官房長官、西村康稔経済再生担当相という面々が集まって、宣言延長について話し合われました。西村さんはこれまで同様、宣言解除には慎重で、『1カ月の延長』を主張。田村さんも厚労省として解除を急ぐ立場にはない。一方で菅さんは『1カ月は長い』と訴えて、それで押し切ったということです。菅さんはギリギリまで見極めたかったようですが、小池百合子都知事ら1都3県のトップが延長を要請する動きを見せている中で、要請を受け取った後では追い込まれた印象になると考えたことは否定できない。もっとも、これまで延長含みで検討していたし、世論調査でも『延長支持』が圧倒的でしたから、もう少し早い判断があってもよかったのではないかと指摘する声が多いですね」
菅首相の決断力、リーダーシップへの疑問が高まっている様子である。
「与党議員の銀座クラブ通いや首相長男のキャリア接待など、手痛いスキャンダルが多くて、菅さんは余裕をなくしていることは事実。自らの会食は封じられ、リラックスしたり『民の声』を直接聞いたりする機会がないのも悪影響を及ぼしていると思われます。山田内閣広報官を一旦かばったのは、辞任ドミノを避けるという判断からでしたが、これまた結果的にミスでした。危機管理に強い菅さんだったはずなんですが……」
新総裁のもとで解散も
続いて、自民党の閣僚経験者に聞いてみると、
「菅さんのスタンスがコロコロ変わっていてやりにくいという声は聞こえてきています。ワクチンは内閣支持率を左右し、政権の命運を左右するというのは本人も自覚していたようですが、結局予定通り届かず接種が遅れている。菅さんの懐刀である和泉洋人補佐官が厚労省のチームとやってきたということですが、製造元との交渉のツメが甘かったのは間違いない。で、河野太郎担当大臣の登場となるわけですが、それ以降も菅さんは、『2月中旬の接種スタート』とぶちあげて、事務方は何とかそのスケジュールに間に合わせましたが、その後が続かない。ゴールデンウイークまでに国民の多数が1度は接種して、晴れて『GoTo再開』という青写真を描いていたこともあるだけに、官邸内の雰囲気がいいはずはないでしょう」
「延長決断の背景には、東京五輪があったことは間違いありません」
とは、先の政治部デスク。
「緊急事態宣言が延長されなかった場合、『東京都の新規感染者は7月第1週に再び1000人を超える恐れがある』という予測を東大の研究者が出していましたが、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会でも同様のシミュレーションを行ってきました。宣言延長で経済への打撃は避けられないが、五輪開催が危ぶまれるようなシナリオは最も避けなければならないということでしょう」
無観客開催なのか、海外からの観客受け入れ見送りに留めるのか、4月上旬までには決定される。
その後も菅政権には試練が待ち受ける。最大の難関は春の補選・再選挙である。
「ここでは、与党で1勝(参院広島)、1敗(参院長野)、1不戦敗(衆院北海道2区)が想定されています。不戦敗は候補者を立てないという意味です。参院長野は現職がコロナで亡くなって実弟が出馬する『弔い合戦』で劣勢は否めない。問題は、本来勝って当たり前の参院広島です。公選法違反容疑で逮捕・起訴され、有罪が確定して失職した河井案里氏の後継を決める選挙で、これを落としたり、落とさないまでも野党に肉薄されるとなると、有力なライバルがいない菅さんでも『菅おろし』の動きが出てくることでしょう。菅さんでは選挙は闘えないという機運が高まれば、東京五輪を見届けた後に総辞職で、新総裁のもとで衆院解散に打って出るという流れです。その可能性が少しずつではありますが、高くなってきている気配を感じています」