刀剣乱舞の聖地も全焼…足利「山林火災」で出火原因を作った人の法的責任は?
約106ヘクタールを焼いた栃木県足利市の山林火災。3月1日に鎮圧が宣言され、死傷者や住宅への延焼は見られなかったが、主に以下のような実害が出ている。
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・山林約106ヘクタールに延焼
・人気ゲーム「刀剣乱舞」の聖地である神社が全焼
・300世帯以上に避難勧告
・中学校が休校
・北関東道足利インターチェンジが通行止め
火が出たのは、適度な高さと難易度から軽装でハイキングを楽しむ観光客も訪れるという両崖山付近から。出火原因について、足利市の和泉聡市長は2月24日、「山頂より少し南のハイカーの休憩場所が出火元かと推測している」と語った。一部報道では、「複数人の男性が指にタバコをはさんだ状態で談笑していた」という目撃情報も出ているが、関連性はわかっていない。
仮に今回の山林火災の原因が、タバコや調理など、誰かの火の不始末によるものだった場合、火事の原因を作った人物はどのような責任を負うのだろうか。また被害に遭った人たちはどのような請求ができるのだろうか。霞ヶ関法律事務所の古橋将弁護士に聞いた。
ポイントは「注意義務違反」
「まず刑事責任を追及される可能性があります。森林法203条1項は、『火を失して他人の森林を焼燬(しょうき)した者は、五十万円以下の罰金に処する』としています。裁判例では、枯れ草の焼却をしようとしたところ、強風に煽られ、付近の山林に延焼出火してしまったことについて、この法律が適用され有罪とされたものがあります」(古橋弁護士)
ポイントは「注意義務違反」の有無。つまり、火事にならないよう十分注意する義務があったのか、あったとしてそれに違反していないかどうかだという。
「例えばこの裁判例では異常乾燥状態で強風が吹いていたといった当日の状況からして、延焼する危険があったことから、焼却を一時断念するか、出火の危険を未然に防止すべき注意義務があったとしました。そしてそのような措置をとらなかったことをもって注意義務違反、すなわち過失を認定しています。
本件でも、当日の状況からして当該人物に出火の危険を未然に防止すべき注意義務があり、それに違反したといえれば、この法律により有罪となります。逆に出火を防止するために十分な準備をしていたが、予想もつかない突発的な事象により延焼した場合等は注意義務違反が認められないかもしれません」(古橋弁護士)
森林法違反の場合は罰金刑だが、さらに重い罪が課せられる場合もあるという。
「失火により、建造物を焼損した場合には、刑法上の失火罪が成立する可能性があります。さらに重大な過失が認められれば3年以上禁固刑等の刑罰が科せられる等罪が重くなります」(古橋弁護士)
今回、無人とはいえ神社が全焼している。出火の原因は明らかになっていないが、出火元と推測される場所は、ハイキングコースの休憩所。タバコのポイ捨てや調理後の火の不始末などがあった場合、少なくとも森林法で罰金刑が課される可能性はありそうだ。
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