JRA厩務員らの給付金不正受給疑惑 勧誘ビラをまいて儲けた税理士の「正体」

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配られたビラ

厩舎スタッフのうちの数人が、熱心に勧誘していたことも強い印象に残っているという。

「普段からお世話になっている税理士や、仲間から誘われたので申請した関係者が大多数でした。不正の片棒を担ぐような意識は皆無だったことを分かっていただきたいです」(同・厩舎スタッフ)

 昨年5月、男性税理士の事務所関係者は、調教助手や厩務員といった厩舎のスタッフに対してビラを撒いている。現物を入手したので、写真でご覧いただきたい。

 写真にある通り、「経済産業省『持続化給付金』申請サポートについて」というタイトルが付けられている。

《厩舎関係者は、原則として皆様が給付の対象です》と断言する一文があるのがお分かりだろう。

 更に《最大で個人100万円・会社200万円の両方を受給できる可能性があるので、該当しそうな方はご相談ください》と積極的に勧誘していたことも分かる。

“報酬”の発生

 更に下段を見れば、男性税理士の事務所に申請サポートを依頼すると、“報酬”が発生すると明記されている。

 税務顧問契約を結んでいる場合は受取金額の7%、締結していない場合は10%との説明だ。

「報道されている100人という数字を例にとって試算してみましょう。仮に100人全員が100万円を受給したなら1億円です。男性税理士は7%でも計700万円、10%なら計1000万円の報酬が入るわけです。ビラを配ってまでも勧誘したことを考え合わせると、最初から報酬を目当てにした可能性もあるのです」(取材している記者)

 件のビラを、面識のない税理士の関係者に手渡されたのなら、多くの厩舎スタッフが不審に思ったかもしれない。

 だが、男性税理士は馬主であるため、厩舎スタッフはよく知る存在だ。おまけに税務処理を依頼している者もいる。

無視された助言

 そんな“馬主で税理士の先生”がスタッフを使ってビラを撒かせたのだ。素直に信じる関係者が多かったのは当然だろう。

「正直に言いますと、知り合いが持ってきたビラを見て、私も思わず『その手があったか』と感心したほどです。仲間の中にも『さすが先生だ』、『馬主をしているからこそ、自分たちを助けてくれる』と感謝する者がいました。普通の税理士と契約している厩舎スタッフからは、『俺たちの税理士先生は競馬と無縁だから、給付金を申請しようなんて考えもしない』という声さえありました」(前出の厩舎スタッフ)

 ところが、調教助手や厩務員が加入する労働組合の関係者が、別の税理士にビラを見せると、「これは距離を置いたほうがいい」とアドバイスされたという。

「『確かに法律上は申請できるが、新型コロナで競馬界がどれだけ被害に遭ったのか、全くはっきりしていない。年末でも申請できるのだから、今は様子を見たほうがいい』と考え直すよう諭されたというのです。これを周囲の仲間には伝えたのですが、男性税理士に全幅の信頼を置いているスタッフには聞き入れてもらえませんでした」(同・厩舎の関係者)

不正調査にも対応!?

 先に紹介したビラには、《受給後の不正受給調査への対応も含みます》という一文も記載されている。「不正を疑われてもご安心下さい。お客さまは完全にお守りします」ということだろう。

「『今は申請しないほうがいい』、『少し様子を見てみたら?』と助言しても、ビラで反論する仲間もいました。《受給後の不正受給調査への対応も含みます》と書かれていることを指摘し、『不正受給と疑われたら、先生はちゃんと対処すると書いてある』と言うわけです」(同・厩舎スタッフ)

 今となってはむしろ、なぜ《不正受給》の一文が書かれていたのかという方が疑問だろう。最初からやましさを認識していたのではないか、と思う人もいるはずだ。

「男性税理士は馬主であり、毎年、厩舎関係者の税務申告を行っています。税理士自身が認めるように、競馬業界に詳しいわけです。ということは、中止になったレースはほとんどなく、レースの勝敗で配分が決まる『進上金』の額もコロナウイルス問題の影響を受けなかったことを理解していたのではないでしょうか。そういう観点から改めてビラを見直してみると、疑問だらけです」(別の関係者)

 昨年5月頃から、短期間で集中的に申請が行われたことにより、JRAが疑問視したようだ。

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