JRA厩務員らの給付金不正受給疑惑 勧誘ビラをまいて儲けた税理士の「正体」
ビラで勧誘
日本中央競馬会(JRA)の調教助手らが、新型コロナ対策である国の持続化給付金を不正受給したとされる問題は、依然としてマスコミ各社によって続報が配信されている。
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例えば共同通信は2月25日、「スポニチ記者が給付申請を勧誘 調教助手ら10人以上か」との記事を配信した(末尾:註1)。
また、そのスポニチが電子版の「スポニチアネックス」で24日、「JRA関係者の不正受給問題 新たな税理士が関与『手数料は受け取らなかった』と説明」と報じた。
この問題は共同通信の配信をもとに、産経新聞や全国のブロック紙、地方紙などが2月17日、「JRA厩務員ら不正受給か 持続化給付金、『100人以上』」(産経新聞)と報じたことに端を発している。
競走馬の調教助手や厩務員は、担当する馬がレースで賞金を獲得すると、額に応じて報酬を得る。
調教助手らは「報酬が新型コロナの影響で減少した」などと申請していたが、日本調教師会が「JRAで競馬の中止はなく、影響はほとんどなかった」と返還を求めていた。
不正受給の規模は《100人以上》という報道が多いが、一部には《300人》と記載したスポーツ紙もあった。受給額は「1億円以上」という。
申請に際して“指南役”が存在したと多くのマスコミが伝えており、「大阪市の男性税理士」と報じられた。
指南役の夢は騎手
AERA dotは2月19日、「JRA厩務員らの給付金不正疑惑 指南役は30頭の競走馬を所有する謎の税理士事務所」との記事を配信したが、この馬主=税理士は謎でも何でもない。むしろ業界では知名度の高い人物だ。
例えば、この男性税理士は2019年7月、サンケイスポーツの連載企画「オーナー直撃」の第1回に登場した。馬主の連続インタビューで、記事では《福永さんや和田さんでG1勝ちたい》との抱負が見出しに使われた。
記事によると、税理士は1974年生まれ。《15、16歳のとき》に武豊騎手(51)に憧れを持ち、JRAの競馬学校騎手課程を受験したこともあったという。
2008年に馬主免許を取得。14年には1億4000万円で競走馬を購入したことがスポーツ紙に報じられた。
17年にはクロコスミアで府中牝馬ステークスを、19年にはワールドプレミアで菊花賞を制したのは記憶に新しい。
税理士の公式サイトは、事業の1つとして《競馬関係者サポート》を謳う。《京都馬主協会常務理事・日本馬主連合会常任監事》という肩書が記され、業務の具体例として《JRA/NAR調教師・騎手・厩務員・助手の税務顧問》が挙げられている。
「馬主兼税理士」の意味
不正受給の指南役が「ただの税理士」ではなく、「馬主でもある税理士」ということが、今回の問題に大きな影響を与えていることは、実のところあまり報じられていない。
デイリー新潮の取材に応じた厩舎スタッフは、「私たちが不正受給を疑われる行為に手を染めてしまったことは、心から反省しております」と謝罪した上で、メディアが「馬主」と報じないことに不安を抱いていると明かす。
「なにも事情を知らなかった私たちが、積極的に不正受給を計画したと思われないか心配です。話を持ちかけたのは馬主でもある男性税理士側です。これは、普通の税理士が『給付金を申請しましょうよ』と提案するのとは訳が違います」
調教助手や厩務員と馬主の力関係は言うまでもない。調教師が厩舎を管理し、馬主は預託料を払って競走馬の育成を依頼する。厩舎で働くスタッフにとって馬主は、文字通り“取引先のトップ”だ。
「男性税理士と顧問契約を結び、毎年の確定申告を依頼している調教助手や厩務員もあちこちにいます。『給付金を申請しましょう』と声をかけられれば、不正など疑うはずがありません」(同・厩舎スタッフ)
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