巨人ドラ5「秋広優人」、“未完の二刀流”だった二松学舎付高時代を振り返る

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 プロ野球の春季キャンプが真っ盛りの今、読売ジャイアンツのある高卒野手ルーキーが、ジャイアンツファンばかりか、他球団のファンまでをもざわつかせている。昨年のドラフトで読売に5位指名された右投げ左打ちの内野手・秋広優人だ。指名されるまで中央球界ではまったく無名の存在で、正式契約を交わした直後に、その2メートルという身長が「ドラフトで指名の日本人選手では史上最長身」と一部で話題になった程度だった。こんなに早くスポットライトが当たるとは、本人も正直、予想していなかったのではないか。

 とにかく規格外である。そして打席での風格がある。一番の注目はバッティングフォームだろう。キャンプイン直後から、あのメジャーリーガー・大谷翔平に似ていると評判になっていたが、少し右足を広げてバットを立てて構えている姿はまさに大谷そのもの。その左打席から放たれる打球がまた“エグい”。身体が大きい分、打球速度が出るため、一軍選手と比較しても遜色のないボールが飛んでいく。

 さらにクセのないスイングだから、変化球への対応力が抜群で、高めの球に対しても力強いスイングができる。要は高校生上がりのバッティングではないのである。当然のように視察した評論家陣はみな、絶賛の嵐。これでさらに身体が出来てきたら、いったいどれほどの打者になるのか、まったく想像がつかない。

 キャンプ自体は2軍からスタートしたが、1軍本隊との紅白戦2試合で7打数5安打とアピールに成功したことで、途中で1軍昇格を果たした。そして球団の高校生ルーキーとしては史上初となる沖縄・那覇での2次キャンプ行きも決め、その先の期待もさらに高まっている。

 これだけ騒がれれば、逆に無名の高校時代も気になるところ。果たして、どんな選手だったのだろうか。

投打二刀流

 秋広の出身地は千葉県船橋市。幼稚園年中時から軟式チームで野球を始め、中学時代は江戸川ボーイズで投手兼内野手を務めていた。高校の進学先として選んだのは東京でも指折りの強豪・二松学舎大付。入学直後の18年夏の甲子園にチームは出場するが、惜しくもベンチ外であった。

 それでも、高い打撃センスが評価され、1年生時の秋の新チームでいきなりレギュラーの座を獲得。都大会3回戦で敗退するまでの予選全5試合で4番・ファーストで起用されたのである。なかでも一次予選代表決定戦となった東海大高輪台戦では右翼に放り込む豪快な一発を放ち、チームの8回コールド勝ちに貢献している。

 注目は2年生時の秋に結成された新チームから投手にも挑戦していることだろう。中学時代に投手経験もあり、あの上背ならば、1年生時から投手として育てる手もあっただろうが、成長痛(=成長期に起こる身体の痛みのこと)の影響があったことから、チームを率いる市原勝人監督はしっかりと体力作りをさせてから投手としての練習を行わせたのである。

 この投打二刀流は同校の偉大なOBで、今や広島東洋カープが誇る主砲・鈴木誠也も経験している。鈴木の場合は1年秋からエースに君臨。投げては最速148キロ右腕として、打っては高校通算43本塁打のスラッガーとして注目され、12年のドラフト2位でプロ入りを果たした。一方の秋広は、段階を踏んだものの、土台固めをしたことで大きなケガをせず、成長することができた。3年生時の7月に行われた浦和学院(埼玉)との練習試合に4番・ピッチャーでスタメン出場した際、投げては3回3安打2失点ながら143キロを計測するなど、投手としての資質が開花していたのである。

 さらにこの試合、打っては4打数2安打2打点を記録し、5回2死二塁のチャンスでは外角の直球を捉え、左中間スタンドに叩き込む2ランを放つなど、このとき訪れていたプロ6球団のスカウトに対して、スラッガーとしての一面もしっかりアピールしていたのだった。

 ところで3年生時の甲子園大会は、新型コロナウイルスの影響で春夏ともに中止になってしまい、代替大会として夏に東東京で独自の大会が行われた。3年生にとっては最後の公式戦となったが、その大会で秋広は全5試合中4試合に先発し、19回を投げて19奪三振、被安打17、4失点という力投を見せた。特に3回戦の城北戦ではこれまでの最速を更新する144キロをマークし、7回で9三振を奪い、3安打完封勝利を挙げている(8-0でコールド勝ち)。

 打っても4回戦の上野学園戦ではライトスタンドへ飛び込む豪快な一発を含む3安打と大暴れ。チームは準々決勝で大森学園に5-6で競り負け、ベスト8で敗退となったが、最終的に打率5割、1本塁打、8打点という好結果を残している。

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