「肩書き」なんていらない!? 芸能人? タレント? どれもしっくりこないふかわりょうが辿り着いたもの
「肩書き、ありますか?」
お笑い芸人のふかわりょうが刊行したエッセイ集『世の中と足並みがそろわない』(新潮社)は、発売日に即重版するなど話題に。ようやく世の中と足並みがそろったかと思いきや、今度はご自身の「肩書き」について頭を抱えておられるようで――。
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「何かお探しですか?」
聞こえていないのか、店員はあらためて声を掛けた。
「贈り物ですか?」
すると男は静かに口を開いた。
「肩書き、ありますか?」
彼女は、聞き取った言葉があっているのか不安でいると。
「私にぴったりな肩書き、ありますか?」
思いもよらぬ注文に困惑する彼女の表情に、一度消えた笑顔が戻ってくる。
「はい、ございます!」
ふかわりょうの「肩書き」は?
映画監督、書道家、鑑定士。世の中には素敵な肩書きがたくさんありますが、中でもこれらは社会にしっかりと腰を据え、凛々しさと勇ましさが相まっています。
私の肩書きは何でしょう。芸能人、タレント、お笑い芸人、はたまたDJでしょうか。時折、職業を尋ねられることがありますが、記入するにしても口頭にしても、「芸能人」と名乗るのに抵抗があるのは、「へー、自分で芸能人って言っちゃうんだ、へー」という幻聴のせい。かといって「お笑い芸人」「タレント」ならいいかというとそうでもなく、サイズの合わないジャケットをはおらされたような、着られなくはないけれど心地の悪さがあります。
雑誌に掲載される際、サイドカーのように私の隣に居座る(タレント)や(お笑い芸人)。たまに、気を遣っているのか、私の活動が多岐にわたるゆえ、(マルチタレント)が添い寝をしていることがあります。大変ありがたいお言葉ではあるのですが、これではぐっすり眠れません。「マルチ」は「複数の」という意味なので、それ自体にネガティヴな意味はないのですが、「タレント」と掛け合わせることによって、たちまち芳醇な胡散臭さが漂います。ひょっとしたら「マルチ商法」の影響もあるかもしれませんが、この言葉は、私が知っている限りで最も気持ちの悪い肩書き。昨今よく耳にする「インフルエンサー」も、かつての「カリスマ美容師」のようないかがわしさを感じますが、喜んで添い寝をする人もいるのでしょう。
本音を言えば、サイドカーや添い寝なしで暮らしたいのですが、なかなかそうもいきません。肩書きがないと、何者かわからない。「4番、松井」という場内アナウンスでは、どこを守っている人なの?という疑問が湧いてしまいます。肩書きは、社会における立ち位置。それで私は、「タレントで、いいか」となります。
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