「いきなり!ステーキ」のキッチンカーが登場 最後の切り札か、食べてみた
いきなり!ステーキは、このたび、キッチンカー(移動販売車)での販売をスタートさせた。その第一弾として、2月20日と21日に行われたのが、東京・墨田区太平のオリナスタワーでの出店。流通アナリストの渡辺広明氏とフードライターの適掃夫氏が現地を訪れ、「いきなり!」の新業態について語り合った。
「いきなり!」を運営するペッパーフードサービスは、昨年、不採算店舗114店を閉店。コロナ禍による休業や営業時間短縮の影響で、20年12月期の純損益は39億円と3年連続の赤字を計上した。「ステーキキッチンカー」は復活の切り札となるのか――。
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適掃夫(以下掃夫):(隣接する)錦糸公園のほうが人でにぎわっているのに、何でわざわざビルの車寄せでキッチンカーを始めたんですかね?
渡辺広明(以下渡辺):キッチンカーは道路占用には該当しないけれど、警察から道路使用許可をもらうのは結構大変です。公園の中についても区の判断になるから、とりあえず試してみるために、ペッパーフードサービスの本社が入居しているオリナスタワー敷地内のほうが好都合だったんだと思います。
掃夫:なるほど。コロナ禍でキッチンカーに活路を見出す飲食店が増えているそうですが、どこでもすぐに出せるというわけじゃないんですね。軽自動車をキッチンカーに改造する整備費用は約300万円だそうですが、「いきなり!キッチンカー」はトラックだからもっと掛かっていると思います。
渡辺:はい。とりあえず目玉の「いきなり!サーロインステーキ重」(1080円)、「いきなり!サーロインステーキ串」(790円)を注文してみましょう。
掃夫:キッチンカーの車高が高いから肉を焼いているところがまったく見えないのはちょっと残念ですね。
渡辺:そうだね。肉を焼いているライブ感が足りないかも。ただ個人的には「肉マイレージ(※いきなり!のポイントサービス)」が使えないほうが残念です。
掃夫:渡辺さんがそんなにファンだったとは。
渡辺:あと電子決済も「今日は使えません」って……。
掃夫:キッチンカーの前に会議室みたいなテーブルが2つ置いてあるので、そこで食べましょう。椅子も会議室から持ってきた感がすごい(笑)。
ちょっと割高な…
渡辺:飲み物どうしようか? 社長の顔写真が入ったオリジナルの「黒烏龍茶」が200円もするけど。
掃夫:2年前くらいに「肉マイレージ」特典の“改悪”と騒がれたお茶ですね。それまで「ゴールド」以上の常連にはサントリー「黒烏龍茶」を無料で提供していたのに、PB品に変えてコストダウンを図ったとも言われた商品です。
渡辺:チラシには「いきなり!サーロインステーキのお肉は形と味を調えるために牛脂を入れるインジェクション加工により美味しくしております」とあるけど、味はどう?
掃夫:可もなく不可もなく。焼き方はいいと思います。家庭じゃこうは焼けない。
渡辺:同感。「ステーキ重」はご飯、コーン、お肉だけで1080円だからちょっと高い気もする。
掃夫:そうなんですよ。たとえばオリジン弁当でステーキ重を期間限定で売っているときでも肉1枚なら1000円は超えてこないし、ナムルみたいな副菜もちょっと添えてありますから、割高感は否めません。
渡辺:あと私が感じたのは、ステーキは鉄板に載っていないとそれほどおいしそうに見えない点かな。
掃夫:はい。そもそも肉を焼いているところが見られないし、鉄板の上でジュージュー鳴っていないので、ステーキを食べたって実感が湧きづらいのかもしれません。キッチンカーならステーキ重や単品より串のほうが可能性を感じませんか?
渡辺:うん。同じ肉なのに串に刺さっているほうがおいしそうに見える。外だからワンハンドで食べられるのも便利です。キッチンカーのようにテイクアウトで販売すると、お店で食べてもらう以上に、「料理そのものが本当においしいのか」が問われるんだね。
掃夫:そうですね。食器の重要性はありそう。でも逆に野外で食べるからお祭りの屋台みたいに、おいしく感じられるって可能性はありませんか?
渡辺:確かにそれもあります。でも、お祭りやフェスなんかで飲み食いするときって非日常の高揚感があるし、まず数あるお店の中からどれにしようかと選ぶ楽しさがあって成立するわけだから、「いきなり!ステーキ」のような全国区のブランドをあえてその場面で選ぶかは微妙な気もします。私は昔、「肉フェス」にいったときにすごくがっかりしたことがあるんです。すごく話題だったし、いい値段してたのにそんなにおいしく感じなかった(苦笑)。
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