阪神ドラ1「佐藤輝明」より活躍する可能性を秘めた“3人の実力派ルーキー”
3月からはオープン戦が始まるプロ野球だが、ここまで最も話題となっているルーキーと言えば、佐藤輝明(阪神1位)になるだろう。2月4日に行われた最初の紅白戦こそ、3打数ノーヒットに終わったが、対外試合ではヒットを量産。2月18日のDeNAとの練習試合では、スコアボードを越える特大の一発を放ち改めて、そのパワーを見せつけている。しかしながら、4試合連続で三振を喫するなど、確実性には課題が残り、育成に最も時間がかかる強打者タイプという点を考えると、1年目から一軍のレギュラーとして期待するのは早計と言えそうだ。一方で、それほど高い注目は集めていないが、シーズン終了時点で、佐藤よりも成績を残す可能性を秘めたルーキーの野手が存在している。
打った瞬間ホームラン
まず、筆頭として名前を挙げたいのが、佐藤と同じく大学から上位でプロ入りした牧秀悟(中央大→DeNA2位)だ。大学球界で日本一レベルが高いとされる東都大学野球の一部リーグで、1年春からレギュラーとして出場し、4度のベストナイン(ショート1回・セカンド3回)に輝いた強打の内野手である。
大学日本代表に選出されたのは佐藤が2年早かったものの、その佐藤が選考から漏れた3年時の日米大学野球では、牧が4番を任された、その後に行われたU18日本代表の壮行試合で、牧は西純矢(当時は創志学園、2019年阪神1位)から一発を放つなど存在感を示している。
現時点で佐藤と比べて、牧が上回っているのが打撃の確実性だ。2月7日に行われた紅白戦では、第1打席でいきなりレフトスタンドへ一発を放ったが、打った瞬間ホームランと分かる当たりで、長打力も申し分ない。プロの変化球に対しても、ボール球をしっかり見極めて四球を奪える選球眼の良さがある。
高校、大学では、ショートとセカンドでプレーしていたが、先日の練習試合はサードも無難に守り、内野であれば、どこでも守れるというのも武器だ。昨年のDeNAはソトがセカンドを守ることが多かったが、ロペスが退団したことでファーストに回るのが既定路線。セカンドのレギュラー争いは、柴田竜拓や田中俊太、伊藤裕季也などがライバルとなるが、牧が抜擢される可能性も十分にありそうだ。それに加えて、新型コロナウイルスの影響で、外国人選手の来日が遅れていることも、牧にとっては出場機会を得るうえで追い風となるだろう。
10試合で8本塁打
強打者タイプのルーキーで、もう一人、早くから戦力として期待されているのが社会人出身の今川優馬(JFE東日本→日本ハム6位)だ。高校時代は故障もあって、背番号二桁で夏の甲子園に出場し、大学でも頭角を現したのは4年春からという遅咲きの選手だったが、社会人1年目から中軸として見事な活躍を見せて、念願のプロ入りを勝ち取った。
177cmとそれほど上背があるわけではないが、年々、体つきはたくましくなっており、それに比例して打球の力強さと飛距離がアップしている。一昨年の都市対抗野球では、宮川哲(東芝→2019年西武ドラフト1位)からライトへ本塁打を打ったように、広角に長打を放つことができるのも魅力だ。
2月20日の楽天との練習試合では、日本復帰登板となった田中将大から、あわや一発という鋭いファウルを放ち、翌日の中日戦(練習試合)では、途中出場ながら2打数2安打2打点と結果を残している。2月23日からは二軍に合流となったが、降格というより、チーム事情と出場機会を考えての意味合いが強く、今後のアピール次第では、開幕一軍も十分射程圏内に入ってくるだろう。
そして、忘れてはならないのが、佐藤と同じくドラフト1位でプロ入りした渡部健人(桐蔭横浜大→西武1位)だ。昨年秋のリーグ戦では10試合で8本塁打という大爆発を見せたが、ホームランを打つという点について、今年のルーキーの中で佐藤と双璧だ。
昨年11月の関東大学選手権決勝でファウルボールを追って左肩を痛めたため、自主トレからスロー調整となっていたが、2月20日に行われた阪神二軍との練習試合で実戦デビューを果たすなど、順調な回復ぶりをアピールしている。チームは中村剛也が故障で復帰のめどが立っていないチーム事情を踏まえると、その穴埋めとして、渡部に白羽の矢が立つことが十分に考えられる。
佐藤は、4球団が競合した末に人気球団の阪神が獲得した選手。それゆえ、メディアの注目はどうしても高くなるが、ここで挙げた3人も、負けず劣らず魅力のある強打者であり、一年目からの大きな飛躍を期待したい。