NHKがまたも「官邸忖度」 五輪問題扱う「Nスぺ」を放送延期
「NHKスペシャル」突然の放送延期に局内は騒然となったという。五輪半年前というタイミングで準備されていた番組に“待った”をかけたのはNHKの副会長。なぜ異例の事態に陥ったのか、その理由に官邸への「忖度」が囁かれている。
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オンエアは差し迫っていた。緊急事態宣言が発令されて1週間が経過した1月15日。その日は2日後に控えた収録に向け、キャスターとスタッフの打ち合わせが行われるはずだった。NHKスペシャル「令和未来会議 どうする? 何のため? 今こそ問う 東京オリンピック・パラリンピック」の放送予定日はわずか先、五輪開会半年前にあたる1月24日だったのだが、
「午前10時半から打ち合わせ開始のところ、チーフプロデューサーがいつまで経っても現れなかったのです」
とは、NHKの中堅職員。
「どうなっているのか、と現場はざわつきました。実はその裏で、NHKスペシャルを管轄する放送総局大型企画開発センター幹部と、正籬聡(まさがきさとる)副会長兼放送総局長の会談が行われていたんです。そこでは放送延期について話し合われ、当日中に現場に伝えられました」
別のベテラン職員は言う。
「正籬さんは政治部出身で、編成なども含む全放送について責任を負う立場です。そのトップが口出しするなんて異例中の異例。すぐにNHKの労組が問題視し、経営陣に説明を求めました」
2月10日、経営陣から回答を得た組合は全NHK職員を対象としたZoomによる説明会を開いた。
討論する予定が…
「経営陣の説明によると、延期の決定は副会長によるものではなく、あくまで“コロナで世論の不安が高まる中でタイミングが良くない”という番組サイドの判断だったと主張しています。しかし、本当にそうだったのか、疑わしいですね」(同)
延期決定の直前、共同通信とNHKが実施した五輪開催の是非に関する世論調査では、開催すべきだという声は2割に満たなかった。
これが影響したのではないか、とこの職員は続ける。
「番組では感染症の教授や社会学者、オーディエンスとして97人の大学生も収録に参加し、討論する予定でした。五輪をやるべきでないという意見が多く表明されれば、どうしても開催したい官邸や組織委員会の不興を買うことになります。結果、官邸や組織委に忖度して正籬さんが番組を延期した、と囁かれているのです」
これまでも、現在NHK理事となった小池英夫氏は報道局長時代、官邸に忖度してニュースを改変するなど、似た事例を幾度も起こしてきたNHK。広報局は、
「個別の番組編成や取材・制作の過程についてはお答えしていません」
だが、放送ジャーナリストの小田桐誠氏は手厳しい。
「世論が五輪反対に傾く中で、官邸や組織委への忖度があったと考えるのが妥当でしょう。NHKは公共放送として透明性の高い説明を行う責任があります」
国を二分するテーマを議論できずして、一体、何のための公共放送か。