韓国から“脱出”する「企業」が続出、その背景にあるものとは?

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日本企業が韓国に進出してきた理由

 日本企業が韓国に進出してきた理由は、低コストであることに加え、日本ブランドを求める市場が存在したからだ。

 韓国に進出している日系企業は、食料品やファッションなどを除けば、多くがサムスンやLG、現代自動車など韓国のグローバル企業に部品等を供給している。

 例えばサンケンが進出した当時、韓国は人件費が安かった。また電気料や水道料など、とても安く、製造コストが低かった。

 品質が低く、不良品も多いが、仮に不良品が10%多くてもコストが15%低ければ、トータルではプラスとなる。

 また、サムスンなどは、必要な時に必要なだけ供給を受けるジャストインタイムを求めている。日本や第3国から供給する場合、在庫を切らさないように余裕を持って輸送する必要があり、保管コストも大きくなる。コストと品質リスクを比較し、韓国進出を決定してきた。

 それまではうまく行っていたのに、落とし穴のようなものができた。2017年に発足した文在寅政権が、最低賃金を大幅に増額したのだ。

 結果、賃金全体が高騰。続いて政府と与党は「週52時間労働制」を導入する。韓国の勤労時間は「週40時間」が原則で、最大週28時間まで超過勤務が認められていたが、「週52時間労働制」で、超過勤務の上限が週12時間に短縮されたことになる。

 結局のところ労働の質は低下し、生産性はガタ落ちした。日本ブランドが求められるかはともかく、低コストではなくなってしまったのだ。

 賃金上昇と労働時間の短縮は企業経営を圧迫し、サムスンは主力生産拠点を韓国からベトナムに移転。現代自動車も韓国外の比率を高めるなど、韓国企業の海外脱出が加速した。

 納入先が韓国外に移転してしまった企業が、高コスト・低品質の韓国にとどまる理由はない。

 韓国の司法に疑念を抱いて撤収した半導体関連製品を手がけるフェローテックは、移転先である中国の業績が急上昇し、株価が高騰した。

 韓国事業を終了したサンケン電気については、シンガポールの投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが、株式の公開買い付け(TOB)を行うと発表した。

 日系企業が韓国を脱出する原因を作った尹美香ら与党議員は、それを自覚することなくサンケンの撤退阻止を叫ぶが、世界市場は韓国脱出がプラスになると見ているようだ。

佐々木和義
広告プランナー兼コピーライター。駐在員として渡韓後、日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える広告制作会社を創業し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月25日掲載

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