事件現場清掃人は見た 息子が自殺、咽頭がんで余命宣告された独居老人の悲劇
自殺や孤独死などで遺体が長期間放置された部屋は、目を覆いたくなるような悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。2002年からこの仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を上梓した高江洲(たかえす)敦氏に、今も忘れられない80代独居老人からの依頼について聞いた。
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高江洲氏は、全国各地から仕事の依頼が来るため、各地のリフォーム会社とパートナー契約を結んでいる。
「私の携帯電話に、清掃を依頼するメールがありました。愛知県の公団住宅で、50歳代の男性が首吊り自殺をして、3日ほど経ってから発見されたと書いてありました」
とは、高江洲氏。
メールを見た後、すぐに依頼主に電話をした。
ダース・ベイダー
「携帯から聞こえてきたのは、ロボットのような異様な声でした。『ワタシ、ハ、愛知県ノ、○○ト、イイマス……ムスコ、ガ、ジサ、ツ、シテ、シマイ……』。言葉が途切れがちなうえに、ガー、ピーという雑音も入ります。まるで映画『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーのようでした」
高江洲氏は最初、いたずら電話かと思ったという。
「不審に思いながらも、機械的な言葉をひとつひとつ拾っていき、復唱して依頼主に確認を取ってもらったのです。愛知県にはパートナー契約を結んでいるリフォーム会社があるので、現場に行って見積もりを出すように指示しました」
その後、高江洲氏は現場へ向かった。
「経験の浅いリフォーム会社に仕事を任せる場合、私が直接現場で指導しながら作業を進めることにしています。現場に着くと、依頼主の男性も待っていました。男性は80代後半で、喉の手術をしたため話す時はマイクを首にあて、発声器を通して声を出していました。そのため、ダース・ベイダーのような声だったというわけです」
亡くなった男性は、依頼主の息子だった。玄関のドアの上部にあるドアクローザー(ドアが自動で閉まる装置)にヒモをかけて首を吊っていたという。
「遺体のせいでドアが開けられず、通報で駆け付けた警官は部屋の窓を破って室内に入ったそうです。部屋には、ガラスの破片が散乱していました。遺体は、腐敗が進んではいなかったのですが、消化液が口からあふれ出て、玄関からドアの外へ流れ出し、廊下のコンクリートを溶かしていました。これが遺体の発見につながったのです」
部屋の間取りは2K。高江洲氏は直ぐに異様なものを目にした。
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