バイデンに脅されて韓国が選ぶ核武装中立 日本にも突き付けられる新たな踏み絵

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漂流する韓国、中朝に従属

 保守が「米国への回帰」を唱えれば、左派は「中立」を訴える。バイデン(Joe Biden)政権の突き付けた踏み絵が韓国社会を二分した。韓国観察者の鈴置高史氏は「核武装中立」が落とし所と見る。

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鈴置:韓国の保守派が「米国側に戻ろう」と叫びます。バイデン政権が「次も反米政権を選ぶなら韓国を見捨てる」と脅したからです(「慰安婦問題を言い続けるなら見捨てるぞ 韓国を叱りつけたバイデン政権の真意は」参照)。

 朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)主筆の「今、驚くべき話が出回っている」(2月18日、韓国語版)は、韓国が米国から見放された証拠を列挙しました。要約しつつ訳します。

・米国では今後、韓国は100%中国に付き、日本は100%米国に付くという見方が主流となった。米国の政府も民間も中国の台頭に深い警戒を共有する時に、北朝鮮と中国に行き過ぎた好意を示し、日本には行き過ぎた敵意を見せる文在寅政権が重なった結果だ。
・ヘーゲル元国防長官らが作成し、バイデン政権に提出した「核と安保」関連報告書は、米国が核の運用を豪州、日本、韓国と論議するアジア版核企画グループの創出を提案した。しかし、その直後に米国では「韓国を除け」との声が上がった。
・アインホン元国務省軍縮担当補佐官は「韓国は中国を意識し、参加しないだろう」とし、セイモア元ホワイトハウス調整官は「反対するであろう同盟国に対し、米国から先に提案する必要はない」と語った。
・ローレス元国防副次官は「韓国は結局、核を保有する北朝鮮に従属する可能性が高い。米国は日本に中距離核ミサイルを配備し中国と北朝鮮に対応せねばならない。この場合、米日はNATO式の核共有協定を結ぶことになる」と言っている。
・ランド研究所のべネット研究員は「北朝鮮が日本を攻撃する場合、米国の対北軍事作戦において韓国の立場を考慮する必要はない、との見解も米国で広まっている」と述べている。
・最近、米国でジョージ・ケナンの「ロング・テレグラム」に比肩すべき匿名の寄稿が登場した。ここでも「韓国が引き続き中国側に漂流している」との認識が示されている。同盟国とその敵国の間を綱渡りすれば、同盟は殻だけが残る。我々はその後をどこまで考えているのか。

 楊相勲主筆は米国で「韓国は中国側」との認識が定着したうえ、米政府は韓国抜きの戦略を立てるようになった、と警鐘を鳴らしたのです。

「共通の敵」が消滅した米韓

 同じ2月18日に、中央日報も「見捨てられ」を警告する論説を載せました。ソウル大学のパク・テギュン国際大学院長の寄稿「米国にとって韓国とは何か」(日本語版)です。
 
 論旨は明快です。韓国は米国にとってさほど重要な国ではなかった。米国は韓国を中立化し軍事コストを削減しようと考えたほどである――。そして、結論は「米国に甘えていると捨てられるぞ」です。最後のくだりを引用します。

・米国の対韓政策は徹底的に米国の国家利益の観点に立脚しているのだ。国家利益を優先するため、つれないのだろか。そうではない。世界秩序は冷徹だ。韓国も徹底的に国家利益を優先しなければならない。
・韓米同盟は両国の国家利益が互いに一致する場合に継続可能だ。韓米関係が時代に合わせて進化するためには、何よりも「米国にとって韓国は何か」という質問に対する客観的かつ科学的な認識がなければいけない。同盟関係を我田引水のように理解すれば、これは両国間の関係をさらに難しくさせるだろう。

 米韓同盟からは「共通の敵」が消滅しました。米国は中国と北朝鮮を仮想敵に定めている。一方、韓国は中朝双方を仮想敵とは見なさなくなりました。そんな同盟が続くわけがありません。パク・テギュン教授は同盟を続けるには米国と同じ敵を設定するほかない、と静かに訴えたのです。

肝心な時に寝返った

――「韓国はさほど重要な国ではなかった」とは、厳しいですね。

鈴置:それが現実です。日本の植民地支配から解放した後、米国は韓国と同盟を結びませんでした。一時は信託統治による中立化を考えたほどです。

 米国が朝鮮戦争に派兵したのは、共産軍の韓国への侵攻を見逃せば欧州での侵略を誘発すると恐れたからに過ぎません。韓国そのものが大事だったわけではない。

 中朝と休戦協定を結ぶ際にも韓国との同盟には消極的で、李承晩(イ・スンマン)大統領の死に物狂いの懇願に根負けしてようやく結んだのです。

 しかし今や、多くの韓国人が勘違いしている。「共に朝鮮戦争を戦った血盟の関係だから」とか「米国は韓国に兵を置いておきたいから」とか理由を挙げ、わがままを言っても米国からは見捨てられないと信じている。まさに、我田引水です。

 パク・テギュン教授が言うように「客観的かつ科学的」に考えれば大状況が変化し、それらの理由は陳腐化しました。そもそも「血盟」は韓国が米国側の国であって初めて成立します。

 米国の若者4万5000人が命を落として守った韓国が、肝心な時に中国・北朝鮮側に寝返ったのです。それに気付いた米国人が「なぜ、我々が韓国を守らねばならないのか」と怒り出すのは当然です(「『文在寅外し』に乗り出した米日 『中国べったり』と見切り、政権交代待ち」参照)

 後者もピンボケの議論となっています。在韓米軍は陸軍を中心に構成されています。しかし中国との緊張関係が高まった現在、米陸軍を韓国から日本やグアムに移した方が合理的なのです(「日本への毒針? 原潜保有を宣言した文在寅政権 将来は『核武装中立』で米韓同盟破棄」参照)。

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