石原良純が語る叔父「裕次郎」の思い出 「年に1度逗子でハワイアンパーティーを」

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 石原慎太郎氏(88)の芥川賞受賞作「太陽の季節」が発表されたのは本誌(「週刊新潮」)創刊の前年、1955年夏だった。翌年3月には小社から単行本が刊行され、間を置かずに映画化。“無軌道”な太陽族の生態を描いた作品は大反響を呼び、弟の裕次郎ともども石原兄弟は時代の寵児となっていく。慎太郎氏の次男で俳優の良純さん(59)が、昭和を彩った父と叔父への思いを語る。

(「週刊新潮」創刊65周年企画「65年目の証言者」より)

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 良純さんが生まれたのは62年。その数年前の“太陽族ブーム”について、

「いつの世にも郷ひろみさんとかSMAP、嵐など、その時代のスターがいますけれど、叔父の裕次郎と父(慎太郎氏)が作ったブームというのは、そうしたスターの複合型だったのではないでしょうか。例えて言えば三谷幸喜さんとSMAPと秋元康さんが合体したくらいの衝撃で、エンターテインメントの革命だったと思います」

 独特の表現で当時を捉える良純さんは、そんな“革命”の空気を知り得る最後の世代だという。

「映画俳優・裕次郎というのは、僕らはリアルには知らない世代です。小学生の時に『太陽にほえろ!』の放映が始まりましたが、映画スターの叔父がテレビドラマに出るというのは当時、大変な出来事だった。そうした感覚は、僕より下の世代だとなかなかピンとこないかもしれません」

 映画「太陽の季節」には裕次郎も端役で出演しているが、その“世界観”には、あらためて驚かされたという。

「太陽族ブームから30年後、僕が20代の頃に海遊びで流行っていたサーフィンやヨットなどは、すでに『太陽の季節』で登場していたわけです。可愛い女の子を連れてスポーツカーに乗り、ヨットで遊ぶという情景は30年経っても変わっていなかった。言い換えれば、流行から30年後に小説を読み、映画を見たりしても全然違和感がないのです。それだけ65年前の石原兄弟の世界観が超越していたということでしょうね」

 そうした兄弟のタッグがいっそう際立ったのは、56年7月に発表され、同時に映画化された「狂った果実」だったと指摘する。

「何しろ、叔父のために父が小説を書きおろしてしまうのですから。『太陽の季節』の映画化が決まった後、次作を書く前に日活の人が父のもとへ来て『ぜひうちで映画化を』と持ち掛けるのですが、そこで父は『弟が主演なら』と、約束を取り付ける。そうやって俳優・裕次郎は本格デビューするのです。主題歌も父が作詞していますが“草陰に結び 熟れてゆく赤い実よ”などと、いかにもといった感じの神経質な歌詞。あれを叔父が歌うのが兄弟の感覚なのか、と思いました」

ハワイアンパーティー

 ブームの後に生まれた良純さんは、年に1回、太陽族の“名残”を体感する場があったという。

「それは子どもの頃、うちの逗子の家で行っていた夏のパーティーです。バッキー白片とアロハ・ハワイアンズという、叔父の曲も作ったことのある生バンドが入って、アロハやムームーを着た大人たちが楽しむわけです。一年で、叔父に会うのはその時だけでしたが、ベンツのガルウィングで駆け付けて、叔母さん(まき子夫人)もパンタロンを穿いてサングラスして、髪の毛も腰くらいまであった。そんな格好している人は、家の周りにはいませんでした。30代半ばの大人たちが“何か面白いことないかな”と集まって飲み、僕たち子どもは夜8時になると寝かされてしまう。それが僕の味わったリアルな『太陽の季節』でした」

 良純さんは大学在学中、裕次郎が社長を務める石原プロに入社した。

「それ以降、僕にとって叔父は社長というイメージしかなく、大病をしてから直接話す機会を得ただけですが、石原プロとはそもそも、叔父がいい映画を作るのを応援する、夢を手伝うための会社だったのです」

 同社が先月“解散”したことは記憶に新しいが、一方で今春、NHK BSプレミアムでまき子夫人をモデルにしたドラマ「裕さんの女房」が放映される予定。良純さんは父・慎太郎氏の役で出演しているという。

「父には『こういう役をやるよ』とは伝えましたが、『はあ』の一言で終わり。常に自分が“起点”の人だから、息子のすることにはあまり興味がないのかもしれません(笑)。ただ、そんな父でも17年の暮れに“裕次郎没後30年”の特番が再放送された時には、『裕次郎が羨ましいな。俺と違ってみんなに愛されている』とこぼしていました。父にとって叔父は分身であり片腕で、叔父もまたそう思っていたはず。ずっと二人三脚でやってきたから、もし叔父が生きていたら、今でも一緒に面白いことを探して楽しんでいたでしょうね」

 時代を“占拠”した不世出の兄弟といえよう。

週刊新潮 2021年2月18日号掲載

特別記念ワイド「65年目の証言者」第2弾 より

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