「八代亜紀」「川中美幸」が明かすコロナ禍のディナーショー事情

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 歌を生業にするスターたちにとって、ディナーショーは晴れ舞台だが、この1年は自粛の嵐が吹き荒れた。なんとか歌を届けたい。その一念でマイクを握った歌手たちが、コロナ禍の日々を赤裸々に明かす。

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「実は歌っていてもお客さんの表情はよく見える。昨年は全員マスク姿だったから、不思議な感覚でしたね」

 そう話すのは、歌手の八代亜紀である。

「普段のディナーショーでは、『雨の慕情』や『舟唄』といったヒットソングの合間にジャズやロックにアレンジした曲を入れて、お客さんが盛り上がる。“アキちゃーん”って声援が飛ぶんだけど、“今回は拍手だけね”ってお願いしたの。そしたら、お客さんは皆が一緒になって高く腕を上げたり下げたりしながら、“雨、雨、ふれふれ”ってジェスチャーで応じてくれて……。その様子が微笑ましくて、楽しく歌うことができました」

 昨年のディナーショーは静岡、横浜、千葉で行った。日程変更もあったが幸い中止とはならず、チケットは完売。けれど感染対策で、400人前後収容可能なホテルの会場でも、半分のお客しか入れなかったそうだ。

「初の試みとして、ショーをオンラインで配信したんです。ホテルの料理を冷凍でご自宅へと届けるプランや、ホテルの部屋からルームサービスで食事を楽しむプランも用意しました」

 昨年はデビュー50周年にあたり、全国津々浦々を「ありがとう行脚」していた矢先だったと振り返る。

「北から南下する予定でしたが、去年の2月末に稚内のコンサートが中止になって以来、11月になるまでお客さんを会場に入れて歌うことはできませんでした」

 毎年のように何百ものステージをこなしてきたが、こんなに歌わない年は初めて……。しみじみ語る彼女は、こうも言う。

「リモートでもアキちゃんの顔が見たいとの声があり、介護施設向けの生配信ライブも始めました。先日は計22カ所、約4千人の方が一斉に視聴してくれた。画面越しにおじいちゃんやおばあちゃんたちが“雨、雨、ふれふれ”って手を動かしているのが分かり嬉しかった。今後はコンサートのあり方も変わってしまうのかなと思っています」

「歌って大丈夫か」

 同じくコロナ禍で節目を迎えた女性歌手がいる。

「今の芸名に改めて45周年になるのを記念して、新曲『恋情歌』を発表しましたが、この状況ではライブでなかなか歌う機会もありません」

 と訴えるのは、ベテラン演歌歌手の川中美幸だ。

「私は12月が誕生日なので、東京のホテルオークラでバースデー&クリスマスディナーショーを毎年開催しています。いつもは客席に下りてテーブルの間を歩きながら歌って喜ばれますが、昨年はステージから一歩も下りられず、ファンの方々も掛け声を出せなかった。“待ってました”と書かれた手作りの大きな画用紙を掲げてくれる人もいて、逆に気を遣わせてしまいました。本当は皆さんの前で歌って大丈夫だろうかと悩んでいたのですが、ホテルも最新の換気装置を導入し、席の最前列は空けるなど対策を徹底してくださった。生のライブが人のぬくもりを感じられて一番ですね」

 昨年の紅白では「けん玉リレー」のギネス記録を更新して話題を集めた演歌歌手の三山ひろしは、

「去年の9月からコンサートを再開しましたが、私が歌う曲を聴くのはお歳を召された方が多く、ファンの方のお子さんやお孫さんに反対されて会場に行きたくても行けないという声もありました。自分のブログなどで感染対策をいかに徹底しているか発信していますが、公演回数を重ねて信頼を得ていくしかない。今は我慢の時だと思います」

 そんな彼と同じく「我慢のしどころ」と言うのは、半世紀ちかくを歌手として活動してきた高橋真梨子のマネージャー氏だ。

「デビュー以来、高橋は休みなく歌い続けたこともあり、去年で全国ツアーは一旦最後と決めていた。それが緊急事態で延期。高橋本人もケジメとして必ずやり切ると決意していますから、安心できる状況になるまで様子を見ています。生歌にこだわって、目の前で聴いてもらえる仕事を中心にこなしてきたので、この1年は収益もなく本当につらかった。欧米と違い芸術関連への補償もなく、音楽業界全体がダメになるのではと心配です……」

週刊新潮 2021年2月18日号掲載

ワイド特集「いつものように幕が開き」より

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