議員のクラブ通い、「銀座」だからあんなに批判された? 庶民の怒りポイントを突いた4人(中川淳一郎)

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 公明党の遠山清彦氏が議員辞職しました。理由は、緊急事態宣言下の外出自粛要請中に東京・銀座のクラブを訪れていた件と、過去にキャバクラの飲食費を政治資金から秘書が支払っていたことがバレたから。また、銀座のクラブに行っていた自民党の松本純氏、田野瀬太道氏、大塚高司氏は離党しました。

 確かに国会議員は「範」を示すことが大事ですが、これ、バカな人には「銀座のクラブに行くのは悪いこと」というイメージがついちゃったんじゃないでしょうか。銀座のクラブからすればたまったもんじゃない。本誌(「週刊新潮」)が報じた当件ではありますが、店自体は悪くない。時短要請に従わず6万円ももらっていなければ、その店の判断です。

 もうこの4人、ここまでズタボロ状態になったのならば、イチかバチかで「コロナ禍における銀座のクラブ及び従業員の貧困調査をしていた」と言えばよかったのに。天下り斡旋で文科事務次官を辞任した前川喜平氏は「女性の貧困調査をしていた」と、出会い系バーへ行っていた理由を述べたみたいにね。

 この釈明、野党議員及び支持者は「前川さんは立派な人だ!」と絶賛する根拠にしたのだから、松本氏のことも大っぴらには叩けない。叩けば「前川さんの時と私の場合と、何が違うんですか?」と開き直れる。

 それにしてもこの4人、本当に迂闊ですよね。パーッとやりたい気持ちは分かりますが、我慢を強いる側が、「上級国民」しか行けない日本最高峰の銀座のクラブでこんな時期に夜遅くまで飲んだら、「下級国民」からすれば怨嗟の声しか出ない。

 女性のいる店に行きたいのであれば、「立川のスナック」「赤羽のフィリピンパブ」「五反田の熟女キャバクラ」にしておけばあそこまで叩かれなかったかもしれません。菅義偉首相や、二階俊博幹事長が1月中旬、猛烈に叩かれたのは「銀座の高級ステーキに8人で行った」ことも理由でしょう。同店はドリンクやサービス料も合わせれば1人6万円という説も。

 もう今の時代、「銀座」という地名は、庶民にとってカーッと頭に血がのぼるキーワードになっているのです。

 栃木県宇都宮市で自民党会派の議員20人が会食をし、そのうちの1人がコロナ陽性だったことを批判されたところ、「食べたのは千円の弁当。それで『会食』と言われても……」(毎日新聞)と答えた議員がいたそうです。

 コレなんですよ! 確かに大人数で弁当食ったのは、コロナに怯える人が多い現状では議員として不適切扱いされるかもしれない。しかし、毎日新聞の取材に「千円の弁当」と答えた議員はうまいこと言いました。

 多分、「吉兆の仕出し弁当(5400円)」とかだったら相当叩かれたと思われます。思い出すのは安倍晋三氏が2012年の総裁選にあたり、3500円のカツカレーを食べて叩かれた件です。

 リスク回避というものは、人間のちょっとした怒りのポイントを外すことで達成されます。今回人生からの転落を演じた4人は、怒りのポイントをド直球で突いてしまったわけです。一般の感覚が分からない方は退陣していただいて構わないので、今回バレてよかったです。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2021年2月25日号掲載

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