「レンタル家族」記事やらせ発覚で「全米雑誌賞」を賞返上 「情報源が執筆者を騙していた」

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 客の依頼に応じて家族や恋人を演じるサービス「レンタル家族」をご記憶だろうか。国内外のメディアがこぞって取り上げたが、本誌(「週刊新潮」)がNHKのドキュメンタリー番組のやらせを指摘すると株は急落。さらに先月、アメリカで、決定的な断が下されていたのである。

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 本誌(2019年6月6日号)が報じたやらせの舞台は18年11月に放送された「NHKワールドJAPAN」の30分のドキュメンタリー。

 番組は、妻を病で亡くした依頼者が、妻と息子と娘を演じる3人の“レンタル家族”と過ごす姿を追った。が、本誌はスタッフの証言を基に、すべてがやらせで依頼者そのものがいなかったことを明らかにしたのである。

 この報道後にNHKはやらせの事実を認め、BPOでも審議された(20年3月に放送倫理違反の判断)。

 このレンタル家族を手がける「ファミリーロマンス」社の石井裕一社長(39)はこの番組が放送される前、一躍時の人となっていた。

 18年4月、米一流誌「ザ・ニューヨーカー」でも大特集されていて、“60代会社員の告白「2年前から妻と娘をレンタルしています」”といった内容の記事が、全米雑誌賞を19年に受賞。しかし先月22日、この栄誉ある賞を、当のニューヨーカー誌が返上したのである。

花形の賞

 この一件を報じた米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の東京支局長、ピーター・ランダース氏は、

「新聞界のピュリッツァー賞に対抗するため、雑誌業界が立ち上げたのが全米雑誌賞です。アメリカでは高い権威を誇りますが、そんな賞が55年の歴史の中で初めて返上されることになりました。うちだけではなく、『ワシントン・ポスト』や『ニューヨーク・タイムズ』も取り上げています」

 と語る。ニューヨーカーが受賞したのはフィーチャーライティングという賞で、

「雑誌賞のなかでも、ストーリー性に富んだ長編のルポルタージュに与えられる花形の賞です。それは一つのテーマを深く掘り下げることで知られるニューヨーカーが最も狙っていた賞なのですが、それを返上する羽目になったわけです」

 実は、ニューヨーカーは、本誌報道後の1年半、記事の信憑性を調査していた。

「その結果、“取材内容に自信が持てない”“私たちの調査結果は彼らが私たちに語ったことの信頼性を大きく損なうもの”と判断したのです。米雑誌編集者協会は“今回、情報源がバトゥマンさん(記事執筆者)を騙していたことが判明しました。これが賞の返上に至った原因です”との談話を発表しています」

 彼ら、とは取材に応じた“レンタル家族”で、「情報源」はファミリーロマンス社の石井社長だ。当の社長を質すと、

「私は、賞の返上に対してなにか言う立場ではありませんので……。ただ、私はニューヨーカーの取材でやらせなどやっていません」

週刊新潮 2021年2月18日号掲載

ワイド特集「いつものように幕が開き」より

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