コロナ禍でも「レンタル二郎食べる人」は人気、本人は「サービスを始めて人格も変わりました」
行動原理は愛
実際に二郎系のラーメン店「ピコピコポン」へ同行してもらうと、「普段ラーメン食べますか?」「普通のラーメンを一杯食べきれるのでしたらミニは大丈夫かと」など、こちらの食べられる量を聞き取りながら、注文を決めるのを手伝ってくれた。麺が提供される少し前に「にんにく入れますか?」と聞かれ、それがにんにくだけではなく、ほかのトッピングも含めた追加の合図であることや、オススメのトッピング、食べ方についても教えてくれる。「あぶら」を増量した清水さんは、あぶらのかかった野菜をつまみのように食べるのが好きだというので試してみた。なるほど、あぶらが甘くてうまい。肉も分厚く、とても850円とは思えないガッツリとした食事だった。
「僕の場合、肉にかじりつきたいと思ったら二郎に行くんです。こんな安価で迫力のあるお肉を食べられるところ、ほかにありませんから」
肉を食べにラーメン店へ行く。中々ない発想だが、あの分厚さなら頷ける。店内には置いていないティッシュペーパーとウェットティッシュを持ち歩き、さらにはブレスケアまでくれるという、まさに「二郎初心者」にとって痒いところに手が届くサービスだ。
「僕と一緒に行ってくれた方から、『2回目は1人で行けました』とか『麺4分の1にして食べきれました』とか報告を受けると、二郎食べる人冥利に尽きますね。僕をきっかけに二郎に通うお客さんが増えて盛り上がってくれれば嬉しく思います」
初心者の案内役となることが多いが、二郎ファン、いわゆる「ジロリアン」からも連絡をもらうことがあるという。
「全国にのれん分けをした“直系”と独自に修行して店を構えた“支店”を合わせて41店舗がありますが、その全店舗を制覇した記念に一緒に食べたい、とか、コロナが落ち着いたら京都店行きましょう、とか。会津若松店まで青春18きっぷで行ったこともあります。遠すぎて友達もついてきてくれないから、一緒に行って欲しいという依頼でした。サービスについても『行動に移してエライ』というようなことを言われます。勝手に二郎食べる人を名乗って怒られないかなと思っていたのですが、特にお叱りを受けることもなく、安心しました」
「飲食代は自分で支払います」という謙虚な一文も「ラーメン愛を感じる」と好意的に受け止められている理由のひとつらしい。清水さんの目的は「二郎系ラーメンの宣伝」で、レンタルサービスの行動原理は二郎愛そのもの。なぜ、そこまで二郎を愛してしまったのだろうか。
「二郎は人生を変えてくれた存在です。お店ごとに味も違うし、これほど熱中できる食べ物はありません。独自のルールがあるところも外国に行ったみたいな非日常感が味わえて楽しいし、このサービスを始めて人格まで変えることができました。大学院進学予定ですが、社会人になっても、僕に需要がある限り、体が持つ限り続けたいと思います。むしろ、二郎に適応した体に進化したいですね」
3度通うとヤミツキになると言われる二郎系ラーメン。行ったことのない方は、いつか「レンタル二郎食べる人」を利用してみてほしい。新しい扉が開けるかもしれない。
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