コロナ禍でも「レンタル二郎食べる人」は人気、本人は「サービスを始めて人格も変わりました」

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塩分がヤバイ

 なぜ「二郎食べる人」のサービスに人気が出たのか。その理由のひとつに、「二郎系ラーメン」のハードルの高さがある。

「ラーメン二郎」とは、東京都・三田に本店をおくラーメン店のこと。こってりとしたスープに太い麺、分厚いチャーシューと山盛りの野菜が特徴的で、価格設定もリーズナブルなことから、一部の人たちに絶大な人気を誇っている。ラーメン二郎に魅了されたファンのことを示す「ジロリアン」という言葉が生まれるほどだ。一方で、量の多さや、トッピングの頼み方、食べる時の暗黙のルールなど、「二郎」独特のしきたりがあり、行ったことのない人や食の細い女性にはハードルが高い面もある。

「二郎系はルールが厳しいというイメージがあるみたいですね。(店の前にできる行列で)並んでいる間に店員が注文を聞いてきたり、食べ終わったらすぐに店を出なければいけなかったり……。もともとは1杯の単価が安いので回転率を上げるために工夫されてきたことなんですが、それが初めての人には『怖い』というイメージを与えるみたいです。女性の場合『完食できるか不安』という方も多くて、店によっては『麺4分の1』などの頼み方もできるのですが、行ったことがない方はわからないですよね」

 興味はあるけれど、ハードルが高い。そんな「二郎」に、詳しい人が一緒に行ってくれる。そこに需要があり、清水さんが始めた「ラーメン二郎食べる人」は、一躍人気サービスとなった。

「この1年で受けた依頼は131件、合計160人くらいの方とご一緒しました。6~7割が女性です。20代の方が多いですが、小学生の子連れや50代の夫婦に依頼されたこともあります。サービス開始当初は昼と夜の1日2回、毎日二郎に行ってました。所属する柔道部の寮では夕飯も出るのでそれも食べて……。体重もですが塩分がヤバイので、水をたくさん飲むようにしています」

コロナに助けられた

「スーパーJチャンネル」「アウト×デラックス」など地上波TVへの出演を始め、YouTubeなどメディアへの露出も多い。タレント顔負けの滑らかな語り口だが、もともとしゃべることは得意だったのだろうか。

「いえ、全く。テレビを見た中高時代の友達から『こんなしゃべるやつだったか?』って、驚かれるぐらいです。普通の大学生だった自分が、二郎を通じてテレビに出たり知らない人から相談されたりするようになるなんて驚きです。小学生の時から柔道一筋で女性と話す機会もほとんどなかったのに、この1年で100人近い女性と食事をしたのもすごいことだと思います」

 身長180センチ、体重110キロの立派な体躯に柔道全国大会の優勝経験もある猛者だが、話し方は丁寧で、言い回しも謙虚。この人柄もサービスが人気となった理由のひとつに違いない。

 ところで、清水さんがツイートをしたのが2020年の1月28日。その直後、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」における新型コロナウイルスの集団感染が明らかになり、マスクやトイレットペーパーが品薄に。4月には最初の緊急事態宣言が発令され、外出の自粛、飲食店の営業が制限されるなど、飲食関係のサービスは厳しい局面を迎えた。

「レンタル二郎食べる人」のサービスにも影響はあったのだろうか。

「依頼の数は毎日というわけではありませんが、コンスタントにあります。メディアに露出するとグワーっと増えて、あとはポツポツと。今は週2回ぐらいです。毎日二郎だと塩分過多になりそうなので、そこはむしろコロナに助けられたような。感染についても、店舗内でおしゃべりするわけではないので、対策さえしていれば問題ありません。食べきれない麺を引き受けて食べる『麺ワープ』は自分もキツイし、コロナの問題もあるので止めました。今は、駅から店までの道のりで食べるスピードや量を聞き取って、依頼者が食べられる量のラーメンを注文するようにしています」

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