綾瀬はるかと高橋一生が入れ替わるドラマのような「入れ替わりの元祖」を追え!
浮上した子供向けの文学作品
現れては消え、消えては現れる「男女入れ替わりもの」。今クールでも、綾瀬はるかと高橋一生が入れ替わる「天国と地獄」の評判がいい。では一体、いつ誰がどこでどんな風にこのテイストの作品を始めたのか。ライターの吉田潮が”調査”したところ、ついに、「本邦初・男女入れ替わりドラマ」を突き止めたのだった。
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綾瀬はるかと高橋一生が入れ替わる「天国と地獄」(TBS)が好評を博している。
男女というだけでなく、捜査一課の刑事と連続殺人鬼が入れ替わるのは面白い。
面白いが、40代以上の中には「また入れ替わりか」と小さくツッコんだ人も。
私もそうだ。「階段落ちで男女が入れ替わる」仕掛けに既視感があるから。
それは1982年の映画「転校生」を観て、幼少期あるいは思春期に衝撃を受けた証拠でもある。
そんな折、編集者から打診された。
「日本のドラマは、入れ替わりもの(とタイムスリップ)がどんだけ好きなんだよ! つうか元祖は何? 誰か調べてよ」と。
私自身も知りたかったので、安請け合いしちゃったから、さあ大変。
「入れ替わりがテーマのテレビドラマの元祖は何か」を探ることに。
ウィキペディアとドラマデータベース、そして個人のブログなどを検索しはじめたところ、ひとつ問題が。
「入れ替わり」のキーワードでは、「乗り移り(死者の魂が別の人間やモノに入りこむ)」や「なりすまし(似ている人物で交換あるいはなり替わる)」、「変身(トランスフォーム)」が混同されてしまうのだ。
今回は純粋に「二人の人物の体が入れ替わる」作品を探したい。
そこで浮上したのは、子供向けの文学作品「あべこべ物語」(サトウハチロー・作)だった。
そういえば、映画「転校生」も原作は児童文学だ。
山中恒の「おれがあいつであいつがおれで」で、大林宣彦監督が映画とテレビ版を作り、その後何十年も入れ替わりの元祖とされた。
そして確信へ
ところが、それよりもずっと前から存在していたのが「あべこべ物語」だという。
入れ替わるのは、やんちゃな兄・運平とおとなしくて気弱な妹・千枝子。
ふたりは、いつもでたらめばかり話す変わり者のおじさんから「ポンポコ玉」という赤い玉をもらう。
このポンポコ玉は、願い事を一度だけかなえてくれるが、かなえられた願い事を人に話すと死んでしまう、と聞かされる。
ふたりは親に叱られた際に、うっかり「女になりたい」「男になりたい」と口にしたがために入れ替わってしまうという物語だった。
戦前に作られたせいか、表現やタイトルが変更され、改訂を重ねたようだ。
私が入手したのは後期の作品と思われる。
それでも、気性も好みも真逆の兄と妹が、意図せず入れ替わってしまった設定を「あべこべ」と表現していたのが大きなヒントとなった。
「あべこべ」をキーワードにしたところ、ひっかかったのは1958年のテレビドラマ「あべこべ物語」だった。
榎本健一が主演、脚本は野末陳平とある。
また、同じタイトルのドラマは1960年(出演は多々良純・泉京子)、1962年(出演は藤山寛美・環三千代)にも作られていたようだ。
これらが入れ替わりモノならば元祖となるのだが、残念ながら映像を入手できず。
映像を持っている方、観たことがある方は教えてください。
さて。サトウハチローが教えてくれた「ポンポコ玉」。
これでわかったのが「へんしん!ポンポコ玉」というドラマだ(1973年、TBS)。
私は1972年生まれで、このドラマをまったく知らなかったが、幸いにもブルーレイが発売されているというので入手。付属の解説書はかゆいところに手が届く内容。
岩佐陽一氏・大久保一光氏による解説(名文!)を読み、これが「本邦初・男女入れ替わりドラマ」と確信。
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