「韓国」外交の惨状 「米中」への二股外交は失敗し、「日英同盟復活」のあおりを受けて
中国包囲網「クアッド」
さて、トランプ前大統領がTPP脱退を表明して、韓国に対するCPTPPへの参加圧力はなくなったが、一方でトランプ政権は日米豪印4カ国が中国を包囲する安保協議会「クアッド」を発展させる「クアッド・プラス」への韓国の参加を示唆した。
日米豪印戦略対話などと訳される通称「クアッド」は、中国に対抗する形で、安倍前首相が「自由で開かれたインド太平洋」を提唱したことに始まっている。
安倍前首相の掲げるこの構想に共感したドナルド・トランプ米前大統領は、「クアッド」を発足、定着させた、とされている。
クアッドの第1回会合は2019年9月、米ニューヨークで開催された。翌20年10月には東京で外相会合が開催されている。
この会合を巡っても、韓国の曖昧な姿勢を語るエピソードがある。
東京での外相会合に先立つ8月31日、ビーガン米国務副長官兼北朝鮮政策特別代表は、韓国、ニュージーランド、ベトナム、台湾などを潜在的な協力国として挙げている。
しかし、その直前、とても「潜在的な協力国」とは思えぬ振る舞いを韓国代表はしている。
8月21~22日、中国の楊潔篪・共産党外交担当政治局委員が釜山を訪れて「米国の側に立つな」と伝えると、当時の康京和韓国外交部長官はクアッド・プラスの公式招待は受けていないと前置きした上で「他国の利益を排除するいかなることも良いアイデアではない」と述べ、参加を否定していた。
中国の顔色をうかがったわけである。
今年、トランプ政権を全否定するバイデン新大統領が就任したことで、文在寅大統領はクアッド消滅を期待したようだが、バイデン大統領は中国に融和的な姿勢は取らないと明言している。
たとえトランプが始めたクアッドであっても簡単にやめる道理はない。
ただでさえ米国と中国の間でフラついていた韓国をさらに悩ませるファクターが生じた。
それが英国の存在である。
ホワイトハウスのサリバン国家安保補佐官が1月29日、クアッドを継承し、拡大と発展を目指すと発表。しかも、トランプ政権が言及した韓国に代えて、英国を参加させる意向を示したのだ。
EUを脱退した英国は、潜在的な経済発展力があるインド太平洋地域での存在感を高めたい意向があり、今年議長国を務める先進7カ国サミット(G7)に韓国、インド、オーストラリアをゲストとして招待する方針だ。
「クアッド」から「クインテット」へ
英国は日本が主導するCPTPPへの参加を申請したほか、「クアッド」参加の意向を示し、早期に最新鋭空母「クイーンエリザベス」を中核とする軍隊を日本の南西諸島に派遣する予定を立てている。
「クイーンエリザベス」艦隊の滞在先は沖縄の在日米軍基地になる可能性が大きく、香港問題や北朝鮮にも圧力になると見られている。
東アジアにおいて英国の存在感が増すことは間違いないだろう。
このようにクアッドが英国を加えた「クインテット(5人組)」となる可能性が浮上する一方、英国は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドと機密情報を共有する「ファイブ・アイズ(Five Eyes)」に日本が参加して「シックス・アイズ」になることを望んでいる。
日本がそのような機密情報に触れる能力があるのかは別として、これは日本としても歓迎すべき流れではあるだろう。
EU脱退で低下が懸念される国際的な影響力を挽回したい英国と中国を牽制する友軍を獲得したい日本の利害が一致したのである。
こうした動きを韓国・朝鮮日報は「日英同盟の復活」と報じている。
言うまでもなく英国は、米国にとっては伝統的な友邦だ。
そして日本にとっても長い付き合いの友好国である。1868年に欧米列強国のなかで最初に明治政府を承認し、1902年に日英同盟を締結して日本の朝鮮半島における権益を承認した国である。
また、クアッドの4カ国は、韓国より英国との関係がはるかに深い。オーストラリアの国家元首は英国女王で、インドは英国の植民地だったが、英連邦の一員として良好な関係を築いている。
日本は韓国との歴史的交流が深いとはいえ、英国とは胸襟を開くことができる間柄だ。
そしてインド・太平洋における影響力は、英国女王を元首とするオーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニアやカナダをはじめ、域内に英連邦の国々を抱える英国の方が韓国よりも大きい。
英国が派遣する軍は一部とはいえ、韓国軍と比べてどちらが信用できるか。多くの関係国は知っている。
英国と米国がCPTPPに参加し、英国がクアッドに加わって「クインテット」が誕生すれば、韓国の地域における影響力と存在感はさらに低下するだろう。
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