「韓国」外交の惨状 「米中」への二股外交は失敗し、「日英同盟復活」のあおりを受けて
英国の加入申請
日本が主導してきた「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」。韓国政府が、この協定への加入を申請する準備を開始したことが明らかになった。文在寅大統領は今年1月11日の新年祝辞で、CPTPPの加入を検討すると述べていた。また、台湾やタイが加入の意向を示し、米国も加入する可能性が浮上したが、韓国の背中を押したのは、2月1日に英国が加入申請したことが大きいようだ。インド・太平洋への干渉を強め、影響力を高める英国に比べ、存在価値が低下し続ける韓国外交の惨状をレポートする。
CPTPPは、2005年にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドが署名して発効した経済連携協定(EPA)が起源である。
2008年、米国が参加の意向を示し、09年に就任したバラク・オバマ大統領が日本やカナダ、オーストラリアなどを加えた「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」を推進した。
日本は当初、与党・自民党が不参加を表明したが、2016年3月に「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案」を国会に提出。同年12月に可決し、翌17年1月、TPPへの加盟を申請した。
しかし、同月、新たに就任したドナルド・トランプ大統領が脱退を表明。
米国の離脱で暗礁に乗り上げたものの米国を除くTPP署名国が交渉を継続し、日本の主導で18年12月に「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」が発効したのはご存じの通りである。
この間、バラク・オバマ米大統領(当時)は、日本と韓国をたびたび訪問。韓国に対しては悪化した日韓関係の修復と合わせてTPPへの参加を要請してきた。
しかし、中国が提唱した一帯一路やアジアインフラ投資銀行(AIIB)とTPPを天秤にかけた朴槿恵前大統領が参加を表明することはなかった。
「踏み絵」を迫った中国
当時の状況を簡単にまとめておこう。
一帯一路は、習近平中国総書記が提唱した経済圏である。
「一帯」は中国からユーラシア大陸を横断して東欧に至る陸路、「一路」は同じく中国を起点に東南アジア、南アジア、アラビア半島を経てアフリカ東岸に至る海路の「シルクロード経済ベルト」だ。
この一帯一路と同時に、中国は2013年、AIIBの設立を提唱した。
軍事のみならず経済でも米国と渡り合う姿勢をさらに明確に示したと言えるだろう。
米中の葛藤が深まるなか、アジア各国はTPPへの参加は米国を選択することを意味し、AIIBは中国を選択することになると考えた。
シンガポールや、マレーシア、オーストラリアなどは両方に加盟したが、日本は米国を選択してTPPに加盟。一方、韓国は2015年、AIIBに加盟した。
ただし、中国一辺倒になるのはさすがに戦略的にまずいと考えたのだろう。
朴槿恵前大統領は、AIIBに加盟する一方、オバマ-トランプ政権が推進した日韓軍事情報包括保護協定GSOMIAを締結し、安倍政権と慰安婦問題で合意した。
また、在韓米軍への高高度防衛ミサイルTHAAD配備を決定した。
要するに、経済は中国中心、安保は米国中心の二股を選択したのだ。
この状況を中国が良しとするはずがない。
17年5月10日、文在寅大統領が誕生すると中国は「踏み絵」を迫った。
大統領就任式2日後の12日に、「一帯一路」国際会議の招待状を送ったのだ。
国際会議は5月14日と15日で、文在寅新大統領は与党・共に民主党の重鎮を派遣した。
ちなみにこの国際会議では、我が国を代表して二階俊博自民党幹事長が分科会の演題に立ち、同じく会議に出席していた北朝鮮を批判している。
北朝鮮は会議初日にミサイルを発射しており、安倍晋三前首相から「好きに話して良い」という言質を取ったとされる二階幹事長は、「国際社会が世界の平和的な交流と発展を目指すフォーラムの日に挑発を行うことは許されない」と演壇から強く抗議した。
また、一帯一路構想については「国際スタンダードに適合した質の高いものとして推進されることを期待する」とインフラ整備が途上国の雇用創出につながる重要性を強調したが、講演時間が短くなり、予定したすべてを話すことはできなかったという。
この時間の短縮は偶然だったか。
中国は日本の参加に感謝しながらも、二階幹事長に余計な話をしないで欲しいと考えたのかもしれない。
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