学年トップから風俗、そして母親の死体遺棄… 「冷凍庫遺体事件」48歳女性の半生

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 下町のアパートで、母と娘はどんな日々を送っていたのか。タテ70センチ、ヨコ70センチ、奥行き50センチ。娘は、このサイズの冷凍庫に亡母を押し込んでいた。

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 1月29日、逃亡先の千葉市内のホテルで逮捕された吉野由美(48)は、

「約10年前、帰宅したら母親が死んでいた。母名義での部屋から出て行かなくてはならなくなると思った」

 遺体を隠していた理由をこう話している。

 東京都葛飾区の都営アパートの空き室で女性の遺体が見つかった事件は、

「娘は家賃を滞納し、今年1月中旬に部屋を引き払っていました」

 と、社会部記者。2019年6月から昨年10月まで、約110万円の滞納だという。

「部屋は2DKです。この一室の押し入れに冷凍庫を入れていた。冷凍庫は、アイスストッカーと呼ばれる、コンビニにあるような天板をスライドさせるタイプ。遺体は全身が凍っていて、上半身は腐敗が進んだ状態で服がかけられていたといいます。外傷はなく死因は特定できていません」

 捜査関係者によると、

「家財道具の処分を委託された業者が冷凍庫を見つけたのですが、なぜ、自分の母親の亡骸を入れたまま置いていったのか。その点がまだ分かっていません」

大学進学を断念

 一人っ子の彼女は、すし職人の父親を20年ほど前に亡くしている。アパートの住人によると、

「お父さんが亡くなり数年すると、お母さんの様子がおかしくなったんです。心か頭の病だったと思う。昼夜を問わず奇声を上げてね。それがあまりにも続くから、10年ほど前、近所の人たちで施設に入れるよう申し入れました。静かになったので施設に入れたと思っていたんです。このとき、もう亡くなっていたのかねえ」

 一人暮らしとなった部屋に彼氏のような男性の出入りはあったが、働いている様子はなかったという。

「実は、ソープランドで働いていたんですよ」

 とは、先の捜査関係者。

「彼女は長年、金銭的に困窮していた。ソープの客で、いわゆるセフレの関係にあった男性がいるが、2~3年前、彼女はその男性にも“母が死んだがお金がない。葬儀代の20~30万を貸してほしい”と無心している」

 風俗で働いていたとは知らなかった、と驚くのは、高校の同級生。

「彼女はもともと大学進学を志望していたんです。私たちの高校は、4年制の大学に数人行くか行かないかという学校。でも彼女は大学に行くために一生懸命勉強して、いつも学年トップの成績でした。でも、卒業間際に断念したんです」

 その原因はおそらく家庭の経済的理由だという。

「高校を出て就職した会社はたった1日か2日で辞めちゃった。じきに運送業の会社に入って大型免許をとり、大型トラックの運転手もやっていた。で、20歳すぎに2社目の社員の人と結婚したんです。それから私は疎遠になって。いつだったか、“父のすし屋で働いている”と言っていたので、結婚生活はそれなりに続いていると思っていたけど」

 学年トップの成績から風俗へと堕ちた48歳の娘。母親を凍らせた理由は、本当に立ち退きへの恐怖だけだったのか。

週刊新潮 2021年2月11日号掲載

ワイド特集「かくも長き巣ごもり」より

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