ワクチン接種前に知っておくべきことは? アレルギーがある場合は「かかりつけ医」に

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重大な副反応が出るのは「宝くじ高額当選」の確率

 国立病院機構仙台医療センターのウイルスセンター長、西村秀一氏は、

「ワクチン接種後すぐに重大な副反応が出るのは10万人に1人レベル。宝くじ高額当選のような確率です」

 と言い、同様にわずかなリスクを怖がって、ゼロリスクを求めようとする風潮に、疑義を呈する。

「たとえば、都営大江戸線の運転士間の集団感染が洗面所の蛇口経由だったという話。保健所の人がそう言っただけで、エビデンスはないのに、手回しの蛇口をセンサー式に置き換えるという。ゼロリスクの求めすぎです。新型コロナはほとんどがエアロゾル感染で、接触感染はあってもかなり少ない。それはCDCなどもデータを出し、結論が出ているんです。ところが最近、接触感染を過度に強調する逆戻りが起きている。また、空気を介して感染するといっても、そこらじゅうにウイルスが漂っているわけではないので、家に入るときにコートを払ってとか、掃除機で吸ってとか、そんな必要はありません」

 東京大学名誉教授で食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏は、

「中国は武漢を2カ月半近く完全に封鎖し、感染者をほぼゼロにしましたが、それを日本でやりますか、という話です。それでもゼロリスクを求めるのは、日本人が恐怖症になっているからです。この1年、専門家が医療崩壊だと脅し、このままでは何十万人が死ぬと騒いだ。テレビや新聞もそれに乗っかり、1年も騒いだのだから、多くの人が恐怖症になるのも不思議ではありません」

 と言い、「リスクの最適化」が必要だと説く。

「コロナ感染のリスクをゼロにしようとすれば、経済のリスクが跳ね上がる。逆も然りで、全部のリスクを最小にするのが、リスクの状態としては“最適”です。そうした判断をするのが政府、政治家の仕事です」

合理性がない「緊急事態宣言」の延長

 先月、東京慈恵会医科大学の外科統括責任者、大木隆生医師が本誌(「週刊新潮」)で、医療のオールジャパン体制を作るために、医療機関に金銭的インセンティブを与え、新型コロナを指定感染症2類相当から外すように提言した。そうすれば緊急事態宣言に頼らずとも医療崩壊は防げる、という主張で、本誌発売後、大木氏は菅総理に呼ばれたが、結果は宣言の延長である。国際政治学者の三浦瑠麗さんが言う。

「最初の緊急事態宣言の際、メディアは感染者数の減少にばかり目を向けましたが、私はこの期間が、医療体制の拡充に使われたのか疑問だ、という旨を発言しました。しかし今回も、医療体制をなんとかすべきだ、という認識はあっても、感染者が減った喜びのほうが勝り、世間の9割が緊急事態宣言の延長を望んでいる。政府の目も世論のほうを向いていて、弱い政権ほどそうなる傾向があります。菅総理は、医療体制の問題を認識しているように見えますが、国民の9割が延長を望めば合理性の有無は別に、正しいことになってしまう。結果、数々の事業者が立ち行かなくなっています。それでも9割の世論が延長を望むのは、7割近くの人は、コロナが収入に影響していないからです」

 感染者は少ないほうがいいに決まっている。が、それだけをゼロにしようと望めば、リスクは「最適」ならぬ「不適」となって、困窮者や自殺者が増えていく。それでも構わないほど、日本人は冷たいということなのか。

週刊新潮 2021年2月11日号掲載

特集「『ゼロ・コロナ』を目指すから『バカの第3波』」より

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