「説教部屋」「DJ気取り」…日本上陸から2週間で「Clubhouse」疲れが続出の理由

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人間には“セミナー講師になりたい欲求”がある?

 もう一人、同じような理由で“Clubhouse疲れ”を経験したのは、40代の会社員である。彼はカードゲームの愛好家なのだが、そのコミュニティがやっているルームを覗いてみると、“吊るし上げ”さながらの場となっていたという。

「この世界の権威と言われている人と、それを持ち上げる太鼓持ちみたいな人たちが、どのようにして技術を磨いてきたかなどについて語り合っていました。それも何だか嫌味ったらしい話が多かったんですが、やがて“どうやったらうまくなるんですか”といったリスナーの質問に答える場面になると、“そんなんじゃいつまでたっても上達しないよ!”と、よってたかって責め立てる説教部屋と化していきました。いつしかゲームの話から人生論にまで踏み込んでいってしまい……」

 彼はClubhouseを聴いていて、人間のとある欲求に気づいたという。

「大学教師とかセミナー講師になりたい欲求ですね。ある種の承認欲求から派生したものなのかもしれません。いろいろなルームを覗いてみましたが、なんだかなぁと思えてきて、もう聴くのをやめました」

 以上の例は、Clubhouseを否定的に捉えてしまった人たちの話だが、一方で普通に生活していたら会話できないような職種・立場の人たちと交流できて楽しいという声ももちろんある。事実、芸能人が一度配信を開始すると、瞬く間に上限の5000人が集まるほどの活況だという。

泥酔しながらリスナーに占いを始めた箕輪厚介氏

 記者も週末の空いている時間を使って、試しにやってみた。

 まずは目についた“カリスマ編集者”として有名な箕輪厚介氏のルームに。

 聞こえてきたのは、意味不明な歌を口ずさむ箕輪氏の声だった。おそらく、いや間違いなく、箕輪氏は泥酔していた。やがて箕輪氏は「占いをしよう」と言い出し、挙手したリスナーを招き始めた。「あなたは今年30億円の負債を負います」。べろんべろんな口調でそう言ってまもなく、突如睡魔に襲われたのか、「じゃあねぇ〜」と配信は終わってしまった。聴衆は280人も集まっていた。

 箕輪氏の場合、運営するオンラインサロンの会員に対するサービスの一環として、Clubhouseは利用価値があるのかもしれない。もっとも、こんな調子だと逆効果にもなりかねないが……。

 次に入ってみたのは、有名起業家や投資家7、8人が座談会をやっているルームだった。DMM.com会長の亀山敬司氏やメルカリ、DeNAの役員らが“成功体験”を明かし合っている。「70億円くらいの投資だと……」と語り出す亀山氏。ビジネスマンたちの興味を引くのか、1000人くらい集まり盛況だった。だが、ここでもやはり疑問に思ったのは、彼らがなぜ「問わず語り」をしているかという点だ。

 同じルームで聴いていたビジネスマンはこう分析する。

「さすがに彼らも商売人だから、自慢だけがしたかったわけではないと思いますよ。自社宣伝をしてイメージアップさせ、リクルート活動に役立てたいなどの意図もあるんじゃないでしょうか。ただ、ちょっと成金たちの自慢大会に聞こえなくもなかったですがね」

 ほかにも「量子力学について語るというので行ってみたら、スピリチュアル系のルームだった」、「有名企業の新入社員が“就職相談に乗ります”と粋がっていた」などと、早くも“事故報告”が飛び交っているClubhouse。

 流行り廃りを乗り越え、新たなSNSとして定着するのだろうか。

デイリー新潮取材班

2021年2月9日掲載

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