事件現場清掃人は見た 孤独死した兄の部屋で妹が「4枚の新聞紙」を敷いた理由

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かけがえのない存在

 亡くなった男性は、6つ下の彼女をかわいがり、よく面倒をみてくれたそうだ。

「男性は独身を通しましたが、彼女が結婚し、長女をもうけたときは、大変喜んでくれたといいます。でも、2人目の子どもが欲しいと言った時、彼は激しい剣幕で『それだけは駄目だ』と反対したそうです。母親は彼女を産んだことで亡くなったので、同じことが妹にも起こると心配したそうです」

 とはいえ、彼女が次女を授かると、男性は祝福したという。

「ところが、次女は先天性の病気を持って生まれ、3年後に亡くなってしまった。その上長女も21歳の若さで亡くなったそうです。2人の子どもを失って悲しみに暮れた時、男性は妹にいつも寄りそって、精神的にも金銭的にも支えたそうです。妹さんにとってお兄さんはかけがえのない存在だったのでしょう」

 2人は食事を終えると、彼女は穏やかな口調で遺体のあった場所に新聞紙を敷いた理由を語り始めた。

「私ができるのは、新聞紙を敷くことだけでした。亡くなった兄のことを思うと胸が張り裂けそうでした。あの部屋にいるといろいろな思いが湧き出てきて、気が触れてしまいそうで……。とても遺体の跡を自分で拭き取ることなどできませんでした」

 高江洲氏はいう。

「彼女の話を聞いて、胸が締めつけられる思いでした。思わず泣けてきました。彼女に、『お兄さんが本当の意味でこの世からいなくなるのは、誰もその人のことを思い出さなくなったときです。ですから、あなたが生きている間は、きっとお兄さんも生きているのだと思います』と話しました」

 その後、彼女は、数カ月おきに近況を知らせるようになったという。

「その間隔は空くようになり、今は数年おきになりました。彼女の悲しみは、少しは癒えたでしょうか」

デイリー新潮取材班

2021年2月9日掲載

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