事件現場清掃人は見た 孤独死した兄の部屋で妹が「4枚の新聞紙」を敷いた理由
孤独死などで遺体が長い間放置された部屋は、目を覆いたくなるような悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。2002年からこの仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を上梓した高江洲(たかえす)敦氏に、60代の女性から伝えられたケースについて聞いた。
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特殊清掃人の現場は過酷だ。死臭漂う家族の遺体の痕跡を、懸命に掃除をする人もいれば、逆に愛情があるからこそ、一切何もしないケースもあるという。
「ある不動産会社から電話がありました。1DKのマンションで、1人暮らしだった60代後半の男性が病死。2週間後に発見されたそうです」
と語るのは、高江洲氏。
「通常、現場を確認してから見積もりを出すことにしていますが、その時は依頼主が立ち会うことになりました」
4枚の新聞紙
高江洲氏が現場に着くと、不動産会社の人と一緒に亡くなった男性の妹がいたという。年齢は60歳ほどだった。
部屋は、キッチンにダイニング、それに6畳の和室があるだけだった。
「なぜかキッチンのフローリングに、4枚の新聞紙が敷いてありました。それをめくると、遺体の跡が残っていました」
遺品は少なく、男性は質素な暮らしをしていたようだ。清掃は問題なく終了。マンションは男性の持ち物だったので、売却することになったという。
結局、高江洲氏の知人が買い取ることになり、売買契約を交わすため、女性と一緒に司法書士の事務所を訪れることになった。
「司法書士事務所の最寄りの駅で待ち合わせることになったのですが、彼女から、『少し早く待ち合わせて、食事をしましょう』と言われました。依頼主から食事に誘われることはまずありません。最初はなんだろうと思いましたね」
高江洲氏は和食店を予約し、女性と一緒に店に入った。
「彼女は、『ふだんはめったに口にしないけど』と言って、ビールを注文しました。平日の昼間。しかもこれから大事な契約を交わす前だというのに……。一瞬戸惑いましたが、私も付き合った方が良いと思い、互いにビールを注ぎ合いました」
すると、彼女は自分の生い立ちを話し始めたという。
「東北の小さな町で生まれたそうです。2人兄妹で、彼女が生まれた時、母親は亡くなったそうです。数年後に父親も亡くし、その後は親戚の家を転々としたそうです」
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