「原田泳幸」マック元社長がまさかのDV容疑で逮捕 “プロ経営者”の栄光と挫折
トップダウンの失敗
ところがベネッセの場合、単に会員の成績が上がるだけでは、子供も親も満足しないという。
「教育産業の場合は、努力を重ねることで人間的に成長するとか、学びを通じて視野が広がるとか、“付加価値”も非常に重視されるのです。こうした体験を会員に味わってもらうとしても、その方策は“数値化”できません。むしろ必要なのは『我々は、こういう方針で子どもたちを教育します』という哲学でしょう。ところが原田容疑者は、企業の究極的な目標やビジョンを構築するのが苦手なのです」(同・有森氏)
リストラで締めつければ、短期的には効果が得られる。だが、強攻策ばかりだと社員は疲弊する。おまけに企業の理念という“旗印”も謳われないのだから、団結力や愛社精神とは無縁の社内風土になってしまう。
「原田氏がマクドナルドホールディングスのCEOに就任した際、第一声は『今から新しいバスが出発する。新しいバスのチケットを買いたい人は乗れ。買いたくない人は乗らなくていい』でした。彼の非情さを現すエピソードだと思います。原田容疑者が欧米流のトップダウン経営で失敗して社を追われ、後任のサラ・カサノバ社長(55)が日本的なボトムアップ経営で会社を建て直したのは対照的です」
日本型経営の再評価
カサノバ社長は原田体勢で疲弊した店舗の建て直しポイントの1つとして、「モダンできれいな店内環境」を挙げていたのは興味深い。
日本経済はコロナ禍という未曾有の天災に襲われ、経営難に苦しむ会社は多い。だが有森氏によると、新型コロナの感染拡大により、かつての“日本型経営”の再評価が進んでいるという。
「まさに1万メートルの経営方針に長けている、創業100年以上という老舗が持ちこたえているのです。原田容疑者の経営スタイルは『名声は自分が独占し、改革の痛みは社員に強いる』側面がありました。しかし、新型コロナの感染拡大で、『社長も平社員も苦境を共に耐える』会社の強さが再認識されています」
註1:引用に際しては、全角数字を半角に改めるなど、デイリー新潮の表記法に合わせた
註2:読売新聞オンライン「マックやベネッセの元トップ・原田泳幸の容疑者、妻に暴行容疑…ゴルフの練習器具で殴る」/産経新聞電子版「日本マクドナルド元社長を逮捕 自宅で妻に暴行容疑」
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