「文在寅外し」に乗り出した米日 「中国べったり」と見切り、政権交代待ち

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徹頭徹尾、韓国を無視した菅首相

――「文在寅外し」を狙う米国を後ろ盾に、保守が左派潰しに出た……。

鈴置:「文在寅外し」に乗り出したのは日本も同じです。菅義偉首相は1月29日、世界経済フォーラムが主催するオンライン会合「ダボス・アジェンダ」で演説しました。

 司会者から「米中間の緊張が高まる中、日本はどう国際協力を進めるのか」と聞かれた菅義偉首相は「日米同盟を基軸にし、基本的な価値観を共有するASEAN、豪州、インド、欧州との連携を緊密にする」と答えました。

「中・ロとも安定的な関係を築く」と述べたものの「韓国」への言及はまったくありませんでした。世界経済フォーラムが提供する動画で視聴できます。21分23秒後からです。

 菅義偉首相は、韓国を「価値観を共にする国」に入れなかっただけでなく「共にしない国」にも含めず、あたかも地球上に存在しないかのように扱ったのです。日本政府のこれほど明確な「韓国無視」は1987年の韓国の民主化以降、初めてです。

 冷戦下、自民党政権は韓国と深く手を結びましたが、それは黙っていました。強権的な政権との連携は国民に受け入れられなかったからです。その時代に戻った感があります。単なる「日韓関係の悪化」でここまではしないでしょう。

「中国と共に行こう」

――「菅首相の韓国外し」は初耳でした。

鈴置:日本のメディアはその部分は報じなかったからです。しかし、朝鮮日報は見逃しませんでした。少し遅れてですが「日本の菅、パトナーシップ強化を謳いながら…韓国はすっぽり抜き、印・豪の名は挙げる」(2月1日、韓国語版)を載せたのです。

 この記事は事実を伝えただけ。何の評価もせず、「文在寅政権の対日融和策への転換は効果を発揮していない」との韓国外交筋の談話を紹介したに留めました。

記事への読者の書き込みは2本。「韓国排除は日本の指導者として当然だ。日本から見れば韓国は信じられない国になった」との意見。もう1本は「日本など信じるな。北韓(北朝鮮)、中国と共に行こう」でした。

 西側に残るのか、一気に中国圏入りするのか――。この読者コメント欄が「岐路に立つ韓国」を象徴しています。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月8日掲載

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