筑波大生不明事件、捜査報告書に残るチリ人容疑者の「偽装工作」と「脅迫ビデオ」
女性の言葉遣いで
「さらに報告書には黒崎さんの失踪時の状況やセペダの行動が明記されており、黒崎さんが行方不明になった直後の12月5日から12日かけて、セペダは彼女が生きているように偽装工作をしていたことがわかっています」(広岡氏)
セペダには2016年11月30日から12月7日にかけ、ブザンソン周辺でクレジットカードを複数回使用した形跡があり、5リットルの可燃性製品、マッチ箱、洗剤噴霧器などを購入していた。また、返却されたレンタカーは非常に汚れており、「森の中に入るのに使用された形跡」があったというのだ。
「レンタカーの位置情報から、ブザンソン近郊の『ショーの森』に移動したことも判明しています。計画的な殺人を行った疑いがありますが、2万ヘクタールにもおよぶ広大な森林ですから、遺体をそこに埋めたとしたら、探し出すのは困難でしょう」(同)
そして、12月5日には、黒崎さんの身を案じたボーイフレンドのアルチュールがショートメールを送信したところ、黒崎さんの携帯電話から〈あなたは私にあまりにも多くのプレッシャーをかけた〉と、意味不明の返信があったという。
「黒崎さんの家族や友人もアルチュールがショートメールを受信したのと同じころ、黒崎さんの携帯からメッセージを受け取っています。〈私に新しいボーイフレンドができた〉〈1人で出掛ける〉といった内容でしたが、セペダが日本人の女子学生に、英文を女性の言葉遣いで翻訳するよう依頼したことがわかっています。この女子学生には依頼したときに交わしたメールのやりとりなどを削除するよう、しつこく要求しています」(同)
加えて、セペダは12月7日から12日までスペイン・バルセロナに滞在した際、現地に住むいとこらに、父親とトラブルになっていると嘘をつき、ヨーロッパに来ていたことを黙っているように頼んでいたという。
ナルシストで女たらし
報告書を検証したチリ最高裁は2020年5月18日、「十分な証拠がある」としてセペダをフランスへ引き渡すことを決定、同年7月24日にフランスへ送致した。現在、彼はフランス警察の拘置施設に勾留されている。
「地元の『レスト・レピュブリカン紙』は今年の1月7日、セペダの精神鑑定の結果を次のように報じています。彼はナルシストで女たらし。相手をマインドコントロールし、自分自身を高く評価する傾向がある。もっとも、ちょっと怒りっぽいものの、衝動的に暴力をふるう人間ではない、と。刑事責任能力については特に問題ないそうです」
フランスの検察は、恋愛感情のもつれからセペダが黒崎さんを殺害したと見ており、公判には自信を持っているという。
「証拠が山のようにあると言っていますからね。フランスの裁判所は3審制で、破棄院(最高裁)まで行くと審議に5~6年かかるでしょう」(同)
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