銀行が「通帳の有料化」を進める背景 詐欺の温床になるリスクも
かつて銀行はディズニーキャラだハローキティだと、通帳のデザインを売りに客集めをしていた。それが今や有料化がトレンドだ。
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メガバンクで最初に有料化に踏み切ったのはみずほ銀行。1月18日以降、新規に口座を開く客は、ネットやスマホで預金を管理する「デジタル通帳」の利用が原則となった。デジタルでなく紙の通帳を希望するなら1冊1100円の手数料を取られ、繰り越しの際もその都度1100円かかる。
「近年のお客様のニーズの変化やコロナによる“新しい生活様式”に対応すべく、ご来店なくお取引いただける“デジタル・リモートサービス”に力を入れています。その一環でデジタル通帳を導入し、店頭などでの取引手数料を改定させていただきました」(みずほ広報)
有料化は、新規口座開設者のうち70歳未満の人が対象だ。70歳以上の人たちはネットの利用環境下にないケースが多いことから、変わらず無料のままだという。
とはいえ50代、60代でもネットやスマホを苦手とする人もいよう。デジタル化は「いつでもどこでも取引できる」「通帳の盗難、紛失の心配がない」などのメリットがあると言うが、通帳の安心感、一覧性の高さは捨てがたい。そもそも、1冊1100円とは……。
「紙通帳発行にかかる各種コストを勘案し、1100円とさせていただきました。なお現状、通帳紛失時の再発行手数料も1100円となっております」(同)
地銀最大手の横浜銀行も、2月16日からやはり70歳未満の新規口座開設者を対象に、1冊1100円を徴収すると発表している。
銀行業界は総じて、デジタル通帳への移行を利用者に促す姿勢のようだ。ただ、紙の通帳手数料は各行で違いがあり、三井住友銀行は、
「4月以降、新規口座開設者から通帳手数料を頂戴しますが、額は年間550円。対象は18歳から74歳です」
かと思えば三菱UFJ銀行は、顧客にデジタル通帳への移行を勧める立場は同じだが、現時点では新規口座開設者に対しても無料での通帳発行を続ける。
こうした現状について、金融ジャーナリストの浪川攻氏は、
「つまるところ銀行は低金利で儲からなくなっており、コストを削減したいのが本音。通帳の発行は紙代など製作費のほか、印紙税、管理にまつわる人件費を含め、大きな負担になっていた」
と解説する。
「おそらく『通帳がなくなる』と聞いて狼狽する高齢者もいるでしょう。この機に乗じて悪賢い連中が“紙の通帳を作るのに特別な手続きが必要になりました”“不要な通帳を取りに伺います”などという口実を騙(かた)って、新種の詐欺を働いたりしかねません」
いやはや、預金者としては懸念材料ばかりなのだ。