冬場の「風呂での急死」8割は溺死だった! 「41度以下、10分以内」の入浴が安全

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 これまで寒暖差による心筋梗塞や脳卒中だと考えられてきた入浴時の急死。だがその死因はまったく別のところにあった。しかもそれは日本人の入浴の仕方にも関係があった。浴室という密室で何が起きているのかを徹底解明する。

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 昨年配信した「風呂場の急死の原因は『冬の熱中症』だった! 年間2万人死亡、最適な入浴時間と温度は?」には、少なからぬ反響をいただいた。

 例えば、医師で弘前大学特任教授の中路重之氏は「いやぁ、びっくりしました」と、感想を寄せてくれた。中路氏は「短命県」として知られる青森県民の健康調査を長年実施し続け、どのような生活習慣が寿命を縮めてしまうのか、大規模研究を行っている。

「このあたりの家は、昔は別棟にトイレや風呂があって、そこで寒さのため脳卒中で倒れてしまう人が少なからずいました。ですから同様に、浴室が寒いから、あるいは湯舟が熱いから血管性の病気が起こる。そう考えてヒートショックという言葉がなじんだのでしょうが、実際はそうではなかったんですね」

 ヒートショックは正式な医学用語ではなく、国内でのみ使われる造語である。だが疾病の予防研究を行ってきた医師でさえ、ヒートショックによって入浴中に多くの人が死亡する、と考えていたのだ。

 ここで改めて前回の記事のおさらいをしておこう。

 暖かい居室から、冷えた脱衣所に行って服を脱ぐと血管が収縮して血圧が上昇し、その後に浴室で湯につかると血管が拡張して血圧が下がる。そのような血圧の急変動で、心筋梗塞や脳卒中などが引き起こされ、場合によっては死亡事故につながるとされてきた。

 しかしながら2012年に行われた厚生労働省の調査では脳血管・心疾患などはわずかで、別の原因が浮かび上がってきた。その調査結果をまとめた論文は、一昨年、日本内科学会英文誌などで発表された。年間2万人超と推計される風呂場での急死の原因は、浴室内での「熱中症」だったのだ。

 今回はその調査内容と、リスクを減らす入浴法についてさらに詳しく記したいと思う。

 調査は2012年10月から13年3月の半年間に東京都、山形県、佐賀県で、入浴関連の場所から119番を要請した4593人を対象に行われた。

 報告では、対象を4つのカテゴリーに分けている。

(1)死亡 1528人

(2)何らかの理由で救急隊の助けを必要とする生存者 935人

(3)体調不良 1553人

(4)怪我 577人

 事故が発生した場所は総数4593件のうち、

・浴室内 3844件

・浴室外 506件

 と、圧倒的に「浴室内」での発生だ。浴室内、それも「浴槽内」で起きた事故が特に(1)や(2)では多い。

(1)の死亡した人では、

・浴室内 1461人

 うち浴槽内 1274人

・浴室外 26人 

(2)の救助された人も、

・浴室内 907人

 うち浴槽内 854人

・浴室外 7人

 他に(1)と(2)ともに不明が数%あるが、浴槽内が圧倒的である。

 これが何を表すのか。研究を行った東京歯科大学市川総合病院教授で、救急科部長の鈴木昌(まさる)医師にご登場願おう。

「これまでは入浴中に急死した方を解剖しても死因がよくわからなかったため、血圧が高くなって脳血管・心疾患を発症したなどとされていたところがあります。しかし本当にそうなら、入浴事故をおこしても生存していた人の多くに脳血管・心疾患が発生しているはずですし、血圧は非常に高いか、非常に低く観察されるはず。ですが、調査結果はそうではなかったのです」

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