コロナ重症者増加で「医療用酸素が不足している」という話は本当か 業界団体に聞いた

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東日本大震災と酸素

 もともと酸素は潤沢な生産余力がある。たとえ需用が急激に伸びたとしても、医療用酸素が不足する可能性は低いのだ。

「マスクや消毒薬なら、原材料の不足に悩まされたと思います。しかし、医療用酸素の原料は空気です。基本的には無尽蔵にあります。生産、流通、販売も専門業者が担当しておりますので、転売などはできません。今後、新たな感染爆発が起きたとしても、インドやブラジルのような医療用酸素が不足するような事態は考えにくいと思います」(同・担当者)

 実際、東日本大震災が発生しても、日本で医療用酸素が不足したことはなかった。

「東日本大震災の時は、被災地にあった医療用酸素の生産工場もダメージを受けました。そこで中部、西日本などから酸素ボンベを被災地に運びました。その際、ボンベ不足を解消するため、厚生労働省が工業用ボンベの医療用酸素ボンベへの転用を一時的に認めたことがありました」(同)

 この特例の効果もあって、地震や津波の被災地でも、深刻な酸素不足は起きなかったという。

「被災地では交通網が遮断されますので、酸素ボンベの輸送に苦労したことはありました。しかし今回のコロナ禍で物流が滞ることはなく、容器に酸素を充塡して、何度も使うことが可能なため、酸素の供給は途絶えることはありません」(同)

専門家の懸念

 もちろん不安材料もある。プロの懸念は素人が想像するような単純な酸素不足ではない。

 まずは電力の問題だ。1月に厳しい寒波が日本列島を襲い、暖房の需要が増加した。

 ところが、北陸地方では太陽光の発電量が減少し、液化天然ガスの調達も遅れ、一時的に電力不足となった。結果として、他エリアから電力の融通を受ける事態が発生した。

「実は医療用酸素の製造には、大変な電力が必要です。もし電力に問題が生じると、医療用酸素の製造に支障がでる可能性はあります」(同・担当者)

 もう1つは、病院の酸素供給量を超えて患者が殺到した場合だ。

「医療用酸素の供給については、問題ないと申し上げましたが、病院の規模などにより必要使用量に見合った酸素ガス供給設備に設計されているため、それ以上の酸素を流そうとすると、供給圧力が低下し、人工呼吸器などで設定されている酸素を投与できなくなる可能性があります。すなわち、酸素がたくさんあるからといって、いくらでも酸素を供給できるわけではなく、病院のキャパを超えた患者を収容できないということです」(同)

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